若い女性とがやがや/小林よしのり「目の玉日記」/ミロシェビッチの死と正義の魔/ゲノムとラプラスの魔

Posted at 06/03/13 Trackback(1)»

昨日は昔の生徒の結婚式で都心へ。由緒あるホテルのこじんまりしたバンケットルーム。思い入れがあるホテルなので嬉しかった。スピーチを頼まれていたのだが、ご主人になる人と私自身との地域的な奇縁に驚いたり、聞いている話と違ったのでその場でスピーチを修正したりと、結構忙しかった。このホテルも3月末で営業を休止して、5年後に再開すると言う。歴史と伝統のあるホテルはいつまでも続けてやってほしいものだと思う。

披露宴後、昔の生徒たちと喫茶店で歓談。久しぶりに若い女性たちとがやがややってみると楽しい。なんだか元気をもらった感じである。実際、みんなでがやがややると言うのは私はとても好きなんだなあと思う。最近そういう機会が減っているので、特にそう思うのだろう。毎日そればかりだと馬鹿になりそうだが。…って、だから昔は相当馬鹿だったんだろうという気がしてきた。

帰りに丸善により、小林よしのり『目の玉日記』(小学館、2006)を買う。小林よしのりが白内障の手術をした体験記。こういう病気話で面白いと感じるものはあまりないが、この本はなかなか面白い。一番へえと思ったのは、世界の失明者は5000万人いて、そのうちの半数は白内障によるものなのだと言う。世界の人口を60億人とすると世界人口の120人に一人は失明していて、240人に一人は白内障による失明だと言うことになる。

日本では年間70万件の白内障手術が行われていると言うから、その失明率は相当低いだろう。よく昔話などで目の見えない老人が出てくるが、そういう人も現代なら見えるようになったのかもしれない。

この本はかなり面白くお勧めしたいのでネタばれになるようなことを書くのはやめよう。「見える」ということがどういうことか、考えさせられる作品である。

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ミロシェビッチ元ユーゴスラビア大統領が死去。戦犯法廷で裁かれていたミロシェビッチは収監先のハーグで「死亡しているのが発見された」という。健康状態の悪化によりモスクワでの治療を求めながら拘置中に死んでしまったと言うのはやはり問題があるのではないかという気がする。東條英機が自殺を図ったときはGHQが全力を挙げて治療して直してしまった。戦犯法廷というのはどうも偽善性を感じてどうなんだろうなあと思うところはある。(特に極東軍事裁判に関しては…というのは本題からずれるのでしばらく措く)やはりおそらくはある種の復讐でありある種の制裁としてその敵が認定した「独裁者・戦犯」を法に名を借りて断罪し、「正義」の神に生贄を捧げるある種の「魔」であるのだろうなあと思う。

まあ戦犯法廷だけでなく、刑事裁判というものはどんなものでも結局そういう性格を持ってきてしまうのだろう。少女誘拐など悪魔的な刑事犯が断罪されるときに我々はある種の快哉を心の中で叫ぶのだが、そこに「魔」がないとは言えない。まあ普段はそんなこと考えもしないし、考える必要もないのだが、個人の犯罪でなく国家の犯罪ということになるといろいろ考えさせられる面が出てくるということだ。現代においては、独裁というのはリスクの高い統治形式だと思う。国民にとっても、指導者本人にとっても。

「正義」という「魔」が断罪されることはない。「正義」は抽象的な観念だからだ。そして、人間世界にある価値を持った秩序を保とうとするならば、その「魔」は必要悪なのだろう。しかしそれがある種の「魔」であると言うことは、時々は感じてみるのが健全ということなのかもしれないと思う。

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ゲノムに関する理解度の調査結果をみて、え、と思って調べてみると、私自身の理解も間違っていた。遺伝子情報の一つ一つのことを「ゲノム」というのかと思っていたが、個々別々の遺伝子情報のことではなく、その生物をその生物たらしめている遺伝子情報の「全体」をゲノムと言うのだと言う。つまり現代の遺伝子工学で考える限り、その情報どおりに全ての条件をそろえればその生物が発生するという、いわば「ラプラスの魔」のような概念であるらしい。……今日は「魔」の話ばかりだな。

まあ正直言って遺伝子情報だけで生物を「創造」できるとは「想像」しにくいのだが、まあ昔に比べて飛躍的に「進歩」したことは事実なんだなあとその「概念」の存在によって改めて確認してしまう。まあそれを「神をも恐れぬ」所業だと感じるか否かというのはその人のセンスにもよるのだと思うが、私自身としてはあまり踏み込んで欲しくない分野だなあと思えてならない。やはり何かとんでもないことが起こるような気がしてしまう。この技術には、核技術のような破壊性が伴われている。核拡散防止条約のように、ゲノム知識拡散防止が図られる事態がそのうち起こるのではないか。そのときに非保有国になってしまうと核問題以上に危険な差別が国際社会に生まれてしまうかもしれない。面倒な時代になったものである。


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