読書ゼミ/美とは何か/ゴーゴリ「ヴィイ」
Posted at 06/02/02 PermaLink» Trackback(1)» Tweet
昨日は一日雨。朝からずっと、時折かなり強く降り、風もあった。夜になると雪に変り、朝起きると外は白くなっていた。遠くの山には雲が低く垂れ込めているけれども、ここの空は明るい。
昨日は仕事はむやみに暇だった。季節的なこともあるが、こういうことでは困る。本は、『ロシヤ文学評論集』『ロシア怪談集』『哲学書簡』『プーシキン』『世にも美しい日本語』などを読む。『世にも…』は読了。
安野光雅/藤原正彦『世にも美しい日本語入門』(ちくまプリマ―新書,2006)は読了。上にあげた古典に比べるとこういう本を読むのがいかに簡単か驚くほどだ。面白いと思ったのは藤原が大学で「読書ゼミ」をやっているという話。読書に関しては岩波文庫を毎回1冊課題に出して読んでこさせて討論する、といったことをトップレベルの大学でやらなければならないような実情になっているのだなあと慨嘆。小学唱歌と童謡、空想とユーモアの話などは面白いが、日本文学がいかに優れているか、といったことを力説する点になると言いたいことはわかるのだが、ちょっと聞き辛いなと感じるのは私も謙遜を美徳とする日本人だからだろう。日本は日本の良さがあるのだが、それを声高に自慢するというのとは違う方法で世界に明らかにするのはどうしたら言いのだろうといつも思う。
文学も絵画も舞台の上のようなもの、だから格調の高い文語文の方が説得力がある、という話は私にはよくわかる。口語文のだらだらした感じと言うのは、内容が格調高いことであった場合、確かに読んでいて情けない感じがすることがよくある。だからといって文語を使いこなす力は正直言って自分にもないし、日本語の堕落を食い止めるというのはむしろそういったところから始まるのかもしれないとも思う。
安野氏の言うことは面白いなと思うことが多い。魅せられること、惹かれることを「美」という言葉で表現する、というのはなるほどな、と思う。だから、恋というマジカルなものの中に美が含まれている、というのはいわばあたりまえのことかもしれない。相手に魅力を見出し、惹きつけられることがなければ、恋という物は成立しないのだから。
と、書いてみると、割と簡単に読んでしまったが、もう少しそのあたりのところを考えながら読んだ方がよかったのかもしれないという気がしてきた。「美」という正体不明なものに迫ることが、少しはできるかもしれない。
『哲学書簡』は書簡十三のロックに関するところで渋滞している。ロックの政府論というより霊魂と思惟の関係をめぐるデカルトとの議論についてのコメントになっていて、そのあたりの事情をよく理解していないためにヴォルテールによる批判もなんだか意味がよくわからない。しかし18世紀、啓蒙時代当時の人々の主関心の所在というのは実はこういうところだったのだろうなとも思う。日本でのデカルト・ロック理解にはおそらくそうした議論の部分の継承がなされておらず、その後の哲学的展開の理解に西欧との間のギャップが生じているのではないかという気がする。
『プーシキン』は『ボリス・ゴドゥノーフ』の成立過程の話が興味深い。といっても、やはりもとの戯曲を読んでいないので隔靴掻痒の感がある。1988年の著なのだが、全体的にソ連科学アカデミー史観とでも言うべきものがかなり感じられるのは仕方がないか。それは『ロシヤ文学評論集』の解説などを読んでいても感じることだが。
『ロシア怪談集』はゴーゴリの「ヴィイ」という作品を読んでいるが、これは実に面白い。キエフの神学校の学生たちの生態の描写なども面白いし、その一人が巻き込まれる魔女騒動もへんてこだ。さる哲学級生(大学教養課程といった年齢か)が魔女に馬にされて夜空を飛び回るが、地上に降りたところを今度は自分が魔女を馬にして走り出す、という描写や、実はその魔女が若い美しいお嬢さんで、周りの庶民たちがみんなお嬢さんは魔女でこういう話がある、と話したりするところを読んでちょっと魂消た。こんな奇妙な話は読んだことがない、と思いつつ、思い出したのは学齢前に読んでもらった、また自分でも読んだ世界の怖い話、奇妙な話といったシリーズの内容で、40年近い時を超えて自分の深層心理の中から呼び起こされるものがある、という気がした。
たまには政治の話も。耐震強度偽装、ライブドア事件、牛肉輸入問題に続いて防衛施設庁の談合問題、東横インの建築基準法違反問題などよくまあこれだけ次々といろいろ事件が起こるものだと半ば呆れ感心する。それにしても日本人の面の皮の厚さはここ数年で急成長を遂げているのではないか。びっくりするような話が多い。
カフェオレを一杯飲み、またPCに向かっている。木々が白く雪化粧して美しい。梢の細い枝にきちんと少しずつ雪が積もり、まるで樹氷のように白い枝が青い空に映えている。
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from 週刊!Tomorrow\'s Way at 06/02/02
★追記、2日9:45/防衛施設庁は談合、工事の割り振りに、 OBのポスト、給与など、待遇を数値化し、差をつけていた――とのニュース。 いくらなんでも、ここまで露骨にやるのかね、と、呆れてしまう。ひどいもんだ。 さらに、施設庁は談合を、全国の出先で主導していた疑い
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