堀江社長逮捕で悪材料出尽し/プーシキンを読んで呼び起こされた私の読書遍歴
Posted at 06/01/24 PermaLink» Tweet
東証。日経平均は反発している。堀江社長逮捕で悪材料出尽くし、というところだろう。基本的には上昇相場ということか。昨日もだいぶ下げたし、上がってもおかしくない局面ということだろう。ヤマハ発動機、軍事転用可能な無人ヘリコプターを中国に輸出していたと言う。たぶん悪気はなかったのだろうが、技術者が軍事に疎いことは非常に危険だと言う教訓的な例だというべきだろう。
昨日は東シナ海で中国漁船が雲霞の如く襲来してせっかく日本漁船がたどりついた漁場で取りあさるという風景を見る。対中国で日本の置かれている状況を象徴するような映像である。狂牛病の問題などで反米感情を広げようという策謀が一部にあると言う説もあるが、こうした映像やヤマハ問題などで反中感情を広げようという意図もどこかにあるのかもしれない。各国のエージェントやその代理を務める政治勢力が日本の民心を動かそうとしているという側面もあるのかもしれない。東シナ海も太平洋も波高し、である。
昨日は午後出かけ、区役所や銀行でいくつか用事を済ませた後、日比谷図書館で『掠奪美術館』を返却し、國本哲男『プーシキン 歴史を読み解く詩人』(ミネルヴァ書房、1988)を借りる。プーシキン関係の本ではほかにはロシアにおけるフリーメーソンの影響などについての本の中にもプーシキンが取り上げられていたが、秘密結社というものの研究の難しさを感じずにはいられない。あの作品のこの部分が関係ある、この部分も、というだけでは面白いが余り説得力がない。事柄の性質上なかなか史料も信憑性のあるものも少なかろうし、通俗的な印象に流れないようにするのは大変だろうと思う。
昨日はプーシキン「ベールキン物語」のうち「その一発」「吹雪」「葬儀屋」の三作を読了。壮大な夢落ちの話しあり、すごいストーリー展開の末にあっと驚く結末、のような「短編の醍醐味」みたいな作品ばかりである。何かの評でホフマンの影響があるという話があったが、なるほどと思う。まさに掌編の魔術、という感じ。ストーリーの作り方の巧みさ、無駄のなさ。オチのつけ方の巧さ。「かたり」の力。太宰治や三島由紀夫を呼んでいるときにも感じるが、「ストーリーテリング」というものの持つある種の悪魔的な力をプーシキンは持っているなと思う。
読んでいる内にだんだん、幼児のころ寝る前に母に読んでもらっていた「世界の怖い話」とか「世界の面白い話」というシリーズの話を思い出してきた。もう今となってはその本がどこの出版社でどういう装丁の物だったのかなど、ほとんど思い出せないが、もし手に入るなら手に入れたいと思う。ほらふき男爵のシリーズなどもこのお話で読んだ気がする。子どものころの私はこの本の話が楽しみで母によく読んでくれとせがんだが、母は読んでいる途中で寝てしまうので、続きが気になって仕方がない。それで自分で読むようになった、というのが読書遍歴の始まりだった。
ある種の夢オチ、とか考えて、ストーリーの巧みさという点で思い出したのはたとえば星新一のショート・ショート。中学生のころ、30冊くらい読んだ。大学生になったころ、高橋葉介という漫画家がいて、彼の作る話もそういう雰囲気があった。「墓掘りサム」なんて話を思い出す。
それから、フェリーニをはじめとするヨーロッパ映画。最近はめっきり見なくなったが、こういう話を読むとまた映画も観たいなという気がしてくる。ようするに、そうしたストーリーメイクの巧みさというところに私は強く惹かれるところがあって、プーシキンの作品はそうした自分の最近は忘れていた好みというものをあからさまに思い出させてくれたと言う感じがある。
まだまだ読んでいない作品はたくさんあるので、じっくり読んでいきたいと思う。自分の中のいろいろな部分が、呼び起こされてきそうな感じがする。
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