ライブドアとオウム真理教の類似性/天の下に新しいものなし/ロングテール

Posted at 06/01/22 Trackback(1)»

ライブドア。今朝のサンプロを見ていてなるほどと思ったのは、時価総額吊り上げ策と企業買収を繰り返して時価総額(つまり会社の価格)をどんどん引き上げていたが、実際の企業価値(会社の価値)はそれについていかないので、その差を明らかにしないためにまた新たな手を打つ、といういわば自転車操業になっていたために、グレーな手法から法律に触れる手段に手を染めざるをえなかった、という分析である。ソフトバンクの90年代も同じようなものだったと言うが、つまりはヤフーの買収やヤフーBBの成功によって企業価値を実際に上げることに成功したと言っていい、のだろう。

ライブドア関係者の直撃などを見ていると、30代の若い男女が深刻な顔をして喋っているのを見るとつい可哀想に思ったり同情したりする気持ちも分からないではないなと思った。若い者が怖いおじさんたちにいじめられている、というイメージを作るのは結構簡単だと思う。沖縄で変死した野口氏も非常ベルを押していたと言うし自殺とは思えない線もあろう。そういう若者のこと、変死した人物、闇社会との関係、「時価総額世界一を目指す」とか言う誇大妄想性、のようなことから言えばオウム真理教と似ている気もする。

閉塞感を感じている若者のブレイクスルーとして駆け込み寺になったのが80年代から90年代前半はオウム真理教、90年代後半から2000年代前半は脱法IT企業だったと断じて見れば、時代の構図はかなり明確に見えてくる、と言えなくもない。65年から75年は学生運動、75年から85年はポストモダン、85年から95年はオウムに代表される脱法宗教、95年から2005年までは脱法IT、と見てみると、「転がる石のような」若者文化というものが割合正確に見えてくるような気がする。ついでにその前を追加すれば45年から55年がアプレゲール、55年から65年が太陽族、と言ったところか。分からない時代のことは相当乱暴になるが。(ついでにもっと引っ付けると35年から45年は内省と学徒動員の時代、25年から35年は共産主義と革新主義の時代。15年から25年は覚醒とデモクラシーの時代。05年から15年は「人生不可解」の時代か。このあたりはもっとまじめに分析しないといけないが。)

もちろんそれぞれの時代層をほかの側面から切り取ることも可能だと思う。私が実際に若者として属した時代は80年から90年という感じで、知り合いにはポストモダン小僧もいるし同年には上祐もいる。しかし実際に付き合いがあったのは尖ったアート系や前代の名残の政治系が多かった。もちろん大雑把な分類である。

いずれにしても若者というものはそれなりに安定した社会であればいつでも閉塞感を感じるのが普通であってブレイクスルーを求めている。どんなに若さがあっても実質的な力を所有してはいないから、今までにない新たな手段を獲得して社会に出て行こうとするのはある意味当然のことなのだろう。その方法は時代によって移り変わっていくから、アートとか哲学とか商業的な方向でもコピーライティングとかそういう小洒落たものこそ若者の変革の手段だと言う思い込みが残存している我々のような世代にとっては生々しい数字を駆使して金の目盛りを吊り上げていくと言う野蛮な手法を取る事がいまどきの若者のやり方だということは実に呑みこみ難い。しかしある意味でそうした原始的な資本主義的なやり方、明治の企業勃興のころの野蛮な資本主義の時代に先祖返りしていると考えてみればまあそんなこともあるんだろうなという気がしてくる。変なてらいやためらいがないだけに、こういうやり方においては若者の方が強いのだろう。もちろん若者だから無茶な暴走もするわけで、やはり明治のころに起こったような新興企業の一気の膨張や一夜にしての没落が起こっているだけなのだと見ることも出来る。

だから、天の下に新しいもの無しというが、たぶんそうなんだろう。歴史は繰り返すと言う言葉も結局は同じことで、世界史のどこかの時代を探せばたいていは同じような事例が見つかるし、流れ方も何か参考になるものが見つかると言えなくもない。その作業によって新しい歴史を作り出すことが出来るわけではないけれども、少なくともこんなことじゃないかという解釈を示したり、見取り図を描いたりすることは可能になると思う。学問というのは本来そういうものなのではないかという気がするが。

***

昨日読んだブログで面白かったのがこちらなのだが、マーケティングというのは普通2割の商品の売り上げが8割を稼ぐと言われるそうなのだけど、普通の本屋の在庫が最大13万件のところ、アマゾンの売り上げの半分以上は上位13万件に入らない書籍からあげていると言う話である。つまり無限に個別化していく下位の部分でいかに稼ぐかがネットの成功の要諦である、ということで、その部分のことをロングテールと呼んでいるのだが、なるほどなあと思う。教養というのはこのロングテールの部分のなかで古典化する一部のものをいつまでも永久保存するためのシステムだという気がするが、ネットがない時代はおそらくは滅び、見向きもされなかったものがいつまでも社会のどこかで生き延びると言うことが以前に比べれば格段に可能になっただろうと思う。それが社会にどのような変化をもたらすのか、ちょっと今のところ見当もつかないが、いい知らせでもあり余りよくない知らせでもあるような気がする。


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