野田秀樹と藤田陽子結婚/命はそんなに大切か/日経紙面批評:今なぜアフリカか/祭りへの渇望/ほか
Posted at 06/01/08 PermaLink» Tweet
思いついた順に。
昨日帰京。スポーツ新聞の見出しに野田秀樹結婚というのがあった。野田さんとはずっと前に飲み会でご一緒させていただいたことがあったが、前のご夫人も同席されていた。あのころは実に劇団ノリだった。いったい何回目の結婚なのかと思ったが、どうも2回目らしい。独身がずいぶん長かったようだ。藤田陽子という人のサイトを見ると、結構美人でやはり役者のようだ。年齢はちょうど半分。昔の観客であったこちらもそれだけ年をとったのだなと改めて思う。
藤田さんのサイトの日記に「皆さんに元気と感動を与えられるよう」という表現を見つける。以前から気になっていたのだが、犬や猫じゃあるまいし、「与える」というのはどうなの?と思う。昔なら「感動をお届けできるよう」と言ったところだろう。おそらくは英語の"give"の直訳体なのだと思うが、「乱れた日本語」のひとつだと思う。役者であり日本を代表する演出家の一人の奥さんになったことだしまた書道も6段ということなのでもうちょっと気をつけていただきたいなと思うのだった。それにしても12月12日に届けを出したそうだがそのあとの日記でも何食わぬ顔で書いておられて「何だと?」という感じ。(笑)
特急の中では田舎の駅で買った日経を読んでいたのだが、ずいぶん読み応えがあった。総合紙というものは朝日でも読売でもどうもイデオロギー性が強く独善的で最近ほとんど新聞というものを読む気がしなくなっていたが、日経という新聞は実に読みやすいなと思う。もちろん経済界的なバイアス、経済第一主義的なイデオロギー性というのはあるのだが、あんまりそういうものに不快感を覚える部分がなくなってきているのか、読みやすかった。経済関係の記事というのはグローバルだしドライだから朝日のような怨念的な観念論も読売のような鉄面皮の迎米論も読まなくて済む。ちょっとあとで紙面批評でも試みてみようと思う。
東京について丸の内の丸善へ。SAPIOの新しい号が出ているのに気付き購入したあと文庫コーナーへ行って『源氏物語湖月抄』上(講談社学術文庫)を購入。文庫だがまるで理科年表というかプロ野球名鑑というか会社四季報というかというような厚さである。これが3冊ということだが、とりあえず上だけでも読むのにどれだけかかるか。読み始めたが系図やら何やらの部分は最初に読む気がしないのでまず『桐壺』の巻から少しずつ。何でもかんでも注釈が書き込んであって読んでいてなかなか楽しい。これを通読したら一読書人としてはかなり源氏の「通」になれそうだ。まだ少し読んだだけだが源氏は動詞の使い方が独特だなと思う。「源氏詞」という言葉があるそうだが、複合的な動詞が多く、意味のふくらみが大きい感じがする。古語辞典の助けも必要なようだが、原文にチャレンジする手段としては結構いいかもしれない。
SAPIOでは「新ゴーマニズム宣言」を読んでちょっと思う。薬害エイズ事件や部落問題を扱っていたころ小林よしのりは具体的な問題について常に実現可能性はともかく解決のためのプランを指し示し、「与党精神」があると評されていたのだが、最近の「嫌米」論においてはそうしたプランがあまり見られない、ような気がする。日本人の精神性の建て直しという点では靖国重視論などももちろん重要なのだが、世界をどのように構築しなおすかというような議論をしてみてもいいのではないか。机上の空論になるのが嫌だからそういうことをしないのかもしれないが、ただ嫌米論だけ表出しても既存秩序の崩壊は目指せてもそのあとの構築に結びつかないのではないかという気がする。
第2次世界大戦はまさに世界大戦ではあったが、戦後に日本が目指すべき世界像のようなものが(大東亜共栄圏構想は世界秩序というにはたりなかったと言うべきだろう)きちんと示せなかったことが敗戦の大きな原因でありその後の屈辱的な対米従属につながったのだと思う。あるべき世界秩序のようなものを構想することはどのような立場にあっても求められるべきことではないかと思う。
SAPIOを読みながら丸善の4階でハヤシライスを食す。ハヤシと珈琲・サラダで1550円というのは場所代だなと思う。日本橋の古いビルのペントハウスで出していたときはもっと安かった気がするが。まあしかし食べたいものはしかたがない。
さるブログを読んでふと、命というものはなぜ大切なのか、そんなに大切なものなのか、と思う。いのちが大切なのは、人というものが死すべき運命にあるからだろう。死んでしまったらそのあとはないから、生きていることを大事にしないともったいない、というのが元来の理由だし、まあそういうはかないものであるからこそいとおしく、いつくしむべきものである、という哲学的な、倫理的な、美学的な価値として命というものはあるのだと思う。
自然科学や社会科学で命の価値を定義しようというのは元来ばかげた話なのだと思う。現実に命を取り扱わざるを得ない医療の現場ではそういうものにどうしても振り回されてしまう。実際にはもう助からないのに「死に目に会う」ためだけに人工心臓で心臓を駆動させていた、ということが身近にあったが、なんだかそういうのはむしろ命を粗末にしていると言う気がしてならない。また命を「絶対的に尊重すべきもの」と考えるともちろん死刑制度などは道理に合わないものになろうが、やはり人には「命をもってしても償うべき罪」というものがあるという方が私などの心の琴線には触れる。そこでは罪と罰という倫理的なものが生命に優先するということが法体系という社会科学的な制度によって支えられているわけで、やはりそのくらいの厳しさが人間社会には必要なんだろうと思う。
ある意味生命というものの価値が絶対的であることを認めるのはもちろん吝かではないのだが、しかしある局面では相対的な価値になることも当然ある、というバランスに耐えることが人間存在には求められている、のだと思う。
紙面批評。(日経1/7朝刊)
1面。「ニッポンの力」というコラム。アフリカに進出したものづくり企業の話。ずっと以前からの長い地道な努力が急に注目されているのは、安保理常任理事国入り失敗の問題が大きいという。つまり、急速に影響力を拡大しつつある中国の前に日本のアジア外交が失敗したために、アフリカ連合諸国の世界的な位置を見直し、接近しつつあることの反映だと言うわけである。確かに国連においてアフリカは多くの票を持つ地域であることは確かだし、中国も日本から強奪したODAをアフリカにばら撒いて地歩を作ろうとしていることは見過ごせないことである。伝統的にアジア偏重であったODAが日本にとってほとんど政治的な効果をあげなかったと言うことは十分反省されるべきだろう。東南アジアはほとんど中国の政治的影響圏として奪われてしまった感もあり、アフリカ・ラテンアメリカにおける影響力の拡大は日本にとっても重要な課題ではあろう。
2面社説。ナショナルミニマムは確実に切り上がっているという主張。しかし、教育レベルの低下はもっと論じられるべき。とにかく変にイデオロギー的に進められる教授内容削減が日本の教育レベルにきわめて悪い影響を与えている。何が楽しくてこれ以上国民の愚民化を進めたいのか。教育界という伏魔殿を何とかしなければ、日本の未来はなかろう。改革のためにはただ金をかければいいというものではないが、金がかからないというわけにはいかないと思う。
33面(アート)。張芸謀監督インタビュー。高倉健主演の映画『単騎千里を走る』はちょっと面白そう。多和田葉子のコラム「溶ける街透ける路」ブダペストの町の点描。「…聖堂内は祈る人たちの熱気に溢れていた。啓蒙主義、アヴァンギャルド、社会主義など、これまでいろいろなアイデアがあったのに、結局キリスト教ひとつに戻っていってしまうのかと思うと寂しい気がして、そういってみると、Kさん(ハンガリー人の教師)が、「そうなんだ。僕の教え子にも、自分にとって一番大切なのは家族、次は神、なんていう子がたくさんいて驚かされる。時代は逆流していくんだろうか。」と答えた。」とある。
私などとは感じ方が正反対だ、というか、戻っていくべきものに戻って行ってああいいことだな、と思うのだが、まあそういう現象を「寂しい」とセンチメンタルな次元でとらえるとらえ方自体が我々の世代の特徴なんじゃないかなという気がする。われわれの上の世代ならそういうさまざまなアイデアに熱中し没頭した人々が多く、彼らにとってその衰退は「寂しさ」なんてレベルの問題ではないと思うし、われわれより下の世代なら端から関心さえ持たないだろう。われわれはそういう意味では「祭りの後の寂しさ」だけをセンチメンタルに感じて、それが我々の世代の特徴となった、そういうことをよく表わしている言葉であるように思った。
私はあんまり縁がないが、ある意味バブルの主役を演じたりもし、またIT長者となったりお金の数字の世界でのお祭りに参加しようという人が多いのは、ある意味祭りに対するある種の渇望感の表れなのかもしれないなという気もしなくはない。
40面「私の履歴書」北杜夫。「中学に入ってまず感じたのは長ズボンの感触であった。小学生のときは半ズボンだったので、なんともこそばゆい感じがした。」昭和初期に既に「小学生は半ズボン」だったのだなとびっくり。私の場合、小学2年で東京から地方に転校し、周りがみんな長ズボンで驚いたことがある。半ズボンは軟弱な都会少年の象徴のような感じだった。子どもにとってそういうことが人間を形成する上で大きな触媒になるなと思った。
土曜紙面NIKKEIプラス1の4面。共有型オフィスについて。パソコンと携帯でどの席でも仕事ができる、というのはなんだか仕事のリアリティがあまりない感じがしてよくわからない。図書館に勉強に行くような感じだ。シェアオフィスというのも発想が面白いなと思うが、喫茶店で仕事をしているような感覚だろうか。しかし、性格的にオープンな人なら社交が広がっていいだろうと思うが、こころに壁を作りがちな人にとっては結構大変な仕事場なのではないかという気がするがどうなんだろう。少なくとも個人所有・管理の資料・用具がたくさん必要な職業ではちょっと難しかろうと思う。
同じく「マナー入門・上手な断り方」。断るときには「誠に申し訳ありませんが」を頭につけるとか、「午後には戻りますがいかが致しましょう」とか情報を付け加えるのがコツだとか、あまりにも当たり前のことが書いてあるが、そんなことも出来ない社会人が多いということだろう。このgooブログでもトラブルがあって要望を出したら謝りもなく「もう直ってるでしょ」という対応。とてもNTTという大会社(の子会社)がやっているとは思えない。というかお役人の対応ということなんだろうか。
5面。シャンパンを楽しむために、という記事で、シャンパン1本と同じくらいの値段のグラスが目安、というものに目から鱗。というかあまりの自己所有の食器の貧弱さに赤面の至りということか。しかし器に盛るものと器自体の値段をそのようにバランスさせる、という考え方は適切だという印象。
7面「はやりを読む」ではパワースポットの特集。エアーズロックを訪れる新婚客が増えたのは何も「世界の中心」だからだけではなく、パワースポットとして注目されているからなのだと言う。一番人気はアメリカのアリゾナのセドナという町だそうだ。初めて聞いたが、有名俳優らが別荘を構え、一大観光地になりつつあるという。日本では奈良県の天河神社が有名だそうだ。私の昔の友人のアナウンサーはここで結婚したが知らないうちに離婚し最近再婚していた。パワーはきいたのだろうか。
まあ混ぜ返してしまったが、私は神社や仏閣が好きで、パワーというか、そこに何か…おそらくは神様が…「いる」という感じは感じることも多い。そういう場所はやはり落ち着く。人間に頭を下げるのは癪に障るが、神様だと遠慮なく?下げられると言うこともあり、私は神社が好きだ。
14面健康特集。ソプラニスタの岡本知高の話。「のどの調子が悪いと、ピアノの音が遠く聞こえたり、自分の声ばかりが聞こえたり。のどだけではなく、鎖骨の回りから肩、首まわり、特にはふくらはぎまでパンパンになるくらい、全身の筋肉に負荷がかかるんですよ」というのに共感する。私ものどの調子が悪いときに無理に人前で話を続けて倒れたことが何度かある。人間のからだはバランスだなといつも思う。
16面「ローカル線をゆく」青森県から秋田県にかけて日本海沿岸を通る五能線。漁村の船魂祭(ふなだまさい)について。必ず旧暦の1月11日にやると言う。なぜかというと、旧暦では元日は必ず先勝なので、11日は必ず大安だからだそうだ。今年は2月8日だと言う。こういう話、私は好きだ。
日経の紙面批評とも思えない内容になったが、というわけです。
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