日本人の日本に関する関心の低さ/イーホームズ社長の話を聞いて/塾女生徒殺人と未熟な人間関係
Posted at 05/12/11 PermaLink» Trackback(1)» Tweet
東京もだいぶ寒くなって、暖房を入れないと日中も過ごせない感じになってきた。
昨日は夕方でかけて夕食の買い物をし、ついでに西友の書店で養老猛『無思想の発見』(ちくま新書、2005)を購入。まだ読んでいないが、日本思想論のようだ。養老氏の最近新潮新書で出ていたいくつかの作はずいぶん売れていたが、この本はランキングに入っていないようだ。やはり「思想」という言葉が敬遠されたか。養老氏の言うことは現実にはそう易しいことではないのだが、タイトルのつけ方で分かったような気になれる本を買っただけで何か理解した気になれる人にはちょうどいいアクセサリーだったのだろう。『無思想』ではあまりアクセサリーにもならないのかもしれない。まあそれだけ日本文化というものに対する関心というものが失われているのかもしれないが。
この関心の低さが回復することがあるのかどうか、ちょっと私にも心もとない。関係者の意識的な努力がなければなかなか難しいと思うのだけど、アカデミズムで自らの地位が保証されている人たちが日本文化全般の活力や関心の向上のために更なるいっそうの努力をするともあまり思えないし、結局は誰か『救世主』が現れるのを待つことになるのかもしれない。しかし、粘り強い復活の努力が各所で行われるのでなければその中から天才が現れてくるということもまたあり得ない。広大な野球の裾野がなければイチローも松井も現れてくることはなかったのだし。
まあそんな裾野の端の方で私は今日も小林秀雄の『本居宣長』を読む、という感じか。小林の世代の人々が逝ってしまってのち、本当に日本文化を愛しリードする人々が再び現れるまで、56億7千万年くらいかかるのだろうか。日本文化の末法を嘆く人ばかりの中でただ朽ち果てていくのも思えばつまらないことだ。
今朝テレビを見ていたらイーホームズの社長が出ていたが、彼の言うことは彼の言うことでそれなりに理解できた。少なくとも、アトラス設計の社長から訴えを受けて調査して自ら公表し、国会の関門ではヒューザーの小嶋社長から恫喝を受けながら正直に対処した点は評価されるべきだし信用できると思う。彼の言うように、イーホームズや行政を攻撃する流れを小嶋社長が作ったために行政の救済や検査機関の是非が俎上に上げられているが、本当の問題は偽造をしたほう・させたほうの総研・ヒューザー・姉歯の3者にあることはあまりに明らかだ。一時的な救済を行政がやることはある程度は仕方ないかもしれないが、あくまで緊急措置であって、ヒューザーらを徹底的に捜査し責任を取らせ、もしその背後関係があるならそちらの方も徹底的に洗ってもらいたいものだと思う。
同志社大生の塾の女生徒殺人に関しては、やはり何かしら精神的に不安定でなにか熱心になれるものを見つけると異常に打ち込んでしまうところがあった大学生が現代のなかなかいうことをきかない講師側から見れば自分勝手できまぐれな女子生徒に振り回され、対処の仕方も分からず思いつめてしまって犯行に及んだ、という構図がなんとなく見えてきた。これはまあ異常者の犯行というよりは、十分にしつけられていない子どもと十分に訓練を受けていない未熟なアルバイト講師の未熟な人間関係が生んだ悲劇というある種の一般性があるような気がする。そういう意味では塾側の対応の遅れがこうした問題を引き起こしたといえる面はあろう。いくつも教室を展開する大規模な学習塾であるようだし、講師の管理や教育も行き届かないところがあったのかなと想像するが、もちろんそのあたりは私にはよくわからない。
いずれにしても、子どもを育てるのが大変な時代、という親御さんたちの述懐が聞こえてくるのはそうだろうなと思う。私は子育ての経験がないのでそのあたりのことは分からないところが多いけれども、子どもは人と人との関係の中で育っていくものだから、得体の知れない多くの人がうようよいる中で子どもを育てなければならないということは大変なことだと思う。自分の子ども時代のことを考えれば、やはりもっと周りの人たちの顔は見えていたように思う。個人情報保護という名目でどんどん人々の顔が見えなくなっていく社会で、大切なものを守り育てていくということがどんなに困難か、思いやられる。
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from 別冊 社内報 at 05/12/24
無思想の発見 養老 孟司 / 筑摩書房 養老先生にお会いする前に先生の著書を読んでおこうキャンペーン第9弾。 てゆうか、お会いしてからもう2ヶ月です。早い。 新聞で発売の広告が打たれたその日に買い求めました。 これまでより読み進むスピードが遅かったのは、内
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