なぜ私は自殺したいと考えたことがなかったのかと考えてみる
Posted at 05/12/06 PermaLink» Tweet
昨日も一日調子が悪かった。昼過ぎに出かけて銀行や郵便局で用事を済ませ地元の本屋を物色したあと東京駅に出る。日本橋口側の丸善がコミック専門店になったのをちょっと物色するが目新しいのはなし。ここはちょっとポジション的に書店としてはきびしい位置かもしれない。切符を買ったり予約を取ったりしたあと丸善丸の内本店に。ターシャ・テューダーのガーデニングの写真集をいくつか見る。店内には在庫が検索できるようになっているのだが、ターシャという文字を著者名で入れてみても書籍名で入れてみても検索に出てこない。ほかの本でもそういうことがあったが、店側の在庫管理のデータとちゃんと連動しているのだろうか、と気になる。5時前だというのにもう夕闇が辺りをつつんでいる。少し黒みがかった暗いオレンジの空に東京駅の駅舎と周辺のビルの明かりが美しい。
地下を通って再び八重洲口へ。久しぶりに八重洲古書館に行く。何の気なしに手に取った桜宮史誠『桜宮式運命を知るオーリングテスト』(実業之日本社、2004)を買う。Oリングテスト自体は1999年にぎっくり腰で倒れたときに通っていた腕のいいカイロプラクティクの治療師さんが多用していて不思議だけれども確かに体の観察には役に立つということを知っていたのでそれを「運命判断」にどんな風に使うのか興味があって買ってみた。
体調を知る、というのがあってそれだけやってみる。読みながらすごく気乗りがして試してみたわけではないのだが、今朝目が覚めてみると感じが違うところがある。最近どうしても、体調の感じ方だとか体の感覚というものがどうもおかしくなっているという感じがあって、野口整体の活元運動やら丹田呼吸法やらをしてみていたのだけど、感覚自体が鋭敏になる感じがもうひとつなかった。これはやってみるとどこに問題があるかが感じられるし感じると体の自然治癒力のようなものが自然に動き出すように思われた。どうもこのやり方には感覚的に受け入れにくいところがあるので不思議なのだが、ちょっとしばらく試してみようと思う。ただ、体調を自分で診断するのにこのテストは一定は使えると言うことは分かったといってよいと思う。
そのあと八重洲ブックセンターに行き、気になっていたけど買わなかった和田哲哉『文房具を楽しく使う 筆記具編』(早川書房、2005)を購入。これは『ノート・手帳編』がとてもよく、私も触発されてロディアやクォ・バディス、モールスキンを使い始めた。自分の行動形態やものの選び方を変化させるものというのはこの年になるとなかなかないのだけど、この著者の文房具に賭ける情熱というか愛情とでも言うべきものの強さには動かされるものがある。共感するとか感動するという以前にこちらが動かされてしまう感じがする。『筆記具編』はまだ読んでいないが楽しみだ。
藤原正彦『国家の品格』(新潮新書)読了。何の気なしに読み始めたが思ったよりよい本だった。語り口が内田樹氏らに見られる暴言を織り交ぜた学者の饒舌という感じになっているのは必ずしも感じはよくないが、父から卑怯な振る舞いはするなといわれた話(藤原氏の父は新田次郎、母は藤原てい)などちょっと無量な思いを感じるところなどがあり、また資本主義=市場主義原理は要するにキリスト教の一派であるカルヴァン派の予定説が敷衍された原理主義的教説だと断言したり、「情緒」の重要性を説いている部分などはうなづくところが多かった。もちろんこうした論者によく見られるように短絡的だったり通俗的だったりするところは多いのだが、要点だけをかいつまんでみればまことにその通りと思うところが多かった。
直接関係ないが、私は自殺したいとかしようとか思ったことは一度もないのだが、なぜなんだろうということを道を歩きながら考えていて、それは子供のころに白虎隊のマンガを読んだときに、命というものは節に殉じて投げ出すものだ、という真理がなんだか体の中に入ってしまったからではないかという気がした。自分がいくら大変だからといってただ死んでしまうのはもったいないと思うし、自分が死ぬことで何か世界が変えられるならその方が役に立つじゃないか、というのが半ば当然のように奥深くに沈潜しているのだと思う。だからつまらないことで死にたいとは思わないし、まあ命を投げ出す機会がないまま年をとって死んでしまうかもしれないのだけど、昔の武士たちと違ってまあそれでもいけないとも思わない。だから私のは武士道というほどたいしたものではないが、藤原氏が述べておられる武士道の記述を読んでどこかでそんなことを考えたようだった。
米長邦雄『人間における勝負の研究』(祥伝社黄金文庫、初出1982)読了。これは米長氏の20年以上前の著作で、90年代以降の本とは勝負哲学などでも内容がかなり変わっているところがある。そういうものも年代や状況に即した哲学があるのだと思うし、変化することはむしろ当たり前なのだと思うが、貸し借りでいえば貸しを作る人間になれとか、子どもには才能や適性よりも集中力を身につけさせろとか、独自の面白い視点が多いところは変わらない。最近どうも視野が狭くなってきているから、こういういろいろなものを読んでみるのも必要だなと思っている。
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