姉歯問題:検査機関の民営化はよいことか
Posted at 05/11/27 PermaLink» Tweet
西友にお昼の買い物に出かけた帰りに、緑道公園を歩きながら姉歯-イーホームズ問題について考える。
ひとつ大きな問題なのは、こうした巨大な費用がかかる物件のフェイルセイフの体制が全く杜撰だったことだろう。姉歯建築士の偽造を見抜けなかった検査機関の存在は、大きな問題である。イーホームズはほとんどが自治体の検査関係者の天下りだということで、自治体の検査体制自体もまた検証されなければならないかもしれない。
そういう意味では行政による検査も問題がないわけではないのだろうが、やはり検査というものを民営化してよいものだろうかということを思う。検査機関が民営化されれば、当然ユーザーのニーズにこたえる機関に注文が増えるだろう。建設会社にしてみれば、長期にわたり厳密な検査をされるよりはなるべく早く、安く、甘くやってもらった方が納期の関係などから助かるという方向に流れることはないとは言えないだろう。こうした事態が起これば検査機関の優秀性もマンション価格に反映するようになるかもしれないが、これも喉元過ぎれば熱さを忘れるの弊を繰り返すような気がしないでもない。
検査者たちは、専門の建築士が公認のソフトを使って行った構造計算に欠陥があるとは思わなかった、といっているらしい。それではチェックの名に値しないだろう。つまりは相手は専門家で間違ったことはしないだろうという悪い意味での性善説に依拠して盲判を押したに等しい。検査機関は、消費者の側からすれば注文主に嫌われるくらいの性悪説に立って徹底的に調べてもらいたいものだが、それでは注文主から敬遠されてしまうだろう。性悪説に立っても成り立つ機関というのは、やはり国や地方行政の機関でなければしかたがないのではないか、という気がする。
もうひとつ思うのは、もともとこういう検査というものが日本の風土にあまり根付いていなかったということである。つまりは現場のワーカーが自らプライドにかけてチェックをすることでそれ以上のチェックが必要ないくらいの完成度をもともと上げていて、検査自体はおざなりになる、ということが普通だったように思う。トヨタに代表される日本のメーカーが強さを維持しているのもそういうところが多いだろう。しかしフランスなどでは労働者はおしゃべりしながら不良品をいっぱい作って平気でいて、それをカードルと呼ばれる検査担当者が厳密に検査して合格を出す、というやり方でやっている。カードルはエリートであり、労働者とは給料も人事体系も違う。いわば「違った世界の住人」であり、彼らの世界が交わることはめったにない。
それだけ彼らは検査する立場のエリート意識と責任感を持っているわけだが、そのあたりが日本とはかなり違う。現場がいい加減になってきてもカードルの責任感は向上しないのが現状の日本なのだと思う。
どちらの方向に進むべきなのかといえば、私の好みとしては現場主義に回帰してもっと質の向上を目指した方がいいと思うが、いわゆるグローバリゼーションの流れの中では難しいかもしれない。いずれにしろ、一番大事なのはどこのポジションでも責任感なのだが、潔癖なまでに強い人もまたまだまだ日本には多いのだけど、ネジが何本か抜けているとしか思えない人も無数に存在する。結局はそうした人をいかに責任あるポジションから排除していくかしかないのだと思うのだけど、無駄に平等主義が蔓延している日本ではなかなか難しい。そういう無駄こそ今最もリストラして欲しいものではあるのだが。
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