体の衰えと心の硬直化/西郷隆盛と滅びの美学
Posted at 05/11/20 PermaLink» Tweet
昨日は起きていられず早めに寝てしまったが、今朝は6時に目が覚めた。夜はなるべく早く寝て朝はなるべく早く起きた方が一日が有効に使えるように思う。夕方は5時だともうどうしてと思うくらい暗いのだが、朝の6時は案外明るい。標準時子午線より5度東にあるせいなのか、地軸の傾きの加減なのか。
どのくらい昔だったか、手を頭の後ろに組んでいないと眠れない時期があって、どうもそれが肩や腰によくないようだったので無理に腰の方に伸ばしたまま寝ることを習慣付けていたのだが、昨夜は手を組んだまま寝てみたら少なくとも頭はすっきりした。これでも大丈夫かなと思ったのだが、起きてしばらくしたら猛烈なくしゃみの連発に襲われ、今になって肩がなんとなくだるいという感じになってきた。
体のバランスを取ると言うのは難しいものだと思うが、おそらくは日常の生活自体にからだの使い方に相当偏りがあるので寝るときの姿勢だけでは調整しきれないのだと思う。こまごました家事をなるべくこまめに片付け、本を読んだり文字を書いたりネットをしたりする時間を少なめにしようとは心がけている。しかし仕事と言うとそういうことがどうしても多くなるのである程度以下にはならない。しかし人間が持っている機能を十全に生かしていないとその部分が衰えるし、そこが衰えるとそれによって何らかの形で支えられているほかの部分も衰えが来る。からだに衰えが来ると考え方や思想、こころも硬直化が始まることは自分でも常々経験している。若いのに既に相当硬直化している人もいるが、あまり長生きは出来なかろう。生きると言うことはとどまることではなく、動くことである。
『西郷隆盛の生涯』(別冊歴史読本、新人物往来社)を少し読む。西郷という人は、私はまだ全然分からないところが多い。しかし考えてみたら断片的なものはそれなりに読んでいても西郷の通しての伝記はきわめて批判的に書かれている井上清『西郷隆盛』上下、(中公新書)しか読んでいない。こんな本で西郷の人物が分かるわけはないわけで、もっと意識して西郷を取り上げたものを読まなければと思う。とりあえず江藤淳『南洲残影』あたりかと思ったが、amazonのブックガイドを見ると西南戦争とか滅びの美学のあたりに偏っているようだ。西郷の経世思想と明治政府の政策との相克のあたりがうまく書けているものがないか、という感じなのだが。
やはり自分としては、西郷という人は自らを道連れに意識的に武士を時代から退場させ、歴史を展開させたと言う印象が強い。しかしそれがおそらく明治政府の政策のさまざまな歪みのひとつの原因になったのではないかという気がするとともに、それはまた太平洋戦争で軍人たちを歴史から総退場させたことで生じた戦後日本の歪みにもつながってくるのかもしれないと思った。「滅びの美学」が新しい時代を開くひとつの扉になるのが日本史の繰り返しではあるのだが、近代という国際社会との関係を持つ厄介な時代はそのような素朴な美学だけではいかんともしがたいところがあるのだと思う。私などもそこにやはり美を見出すように作られている日本人ではあるのでそこが損なわれることは残念ではあるが、そうした素朴な美学だけでなくもっと大陸的な執念深さとか数千年前の約束を実現させて国を建てるような気の遠くなるような歴史意識を持った方がよいと言う部分もあろう。
私は少なくとも今までは西郷より大久保の方を遙かに高く評価していたのだが、西郷がうまく評価できないと日本近代史の印象がぼやけてしまうと言う部分は絶対にあるなと最近よく思う。
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