電車のドアを自分の手で開ける季節/中江藤樹
Posted at 05/11/18 PermaLink» Tweet
昨日は昼頃から松本に出かけ仕事。電車の扉が、開閉を手動でやるようになっていた。冬になると寒いから必要のないところは開けなくなる。天気はよく日差しは強く、車内は暖かい。駅で降りて仕事先まで歩く。風はまだそんなに冷たくない。スウェードのジャケットを着ていくつもりだったのに、間違えてウールのジャケットを着ていった。寒いかと思ったが何とかなった。
仕事を終えて帰ってきて残務を片付け、夕方から夜は別口の仕事。それなりに忙しい。父の誕生日でささやかな祝い。
小林秀雄『本居宣長』を読みつづける。『日本思想史入門』を読んだからだいぶ読みやすくはなったが、かなり何度も読んだり踏み込んで理解しようとしないと読み取れないことが多い。
(八)江戸期の新学問の祖とも言うべき中江藤樹について。江戸時代の学問の主流はもちろん林家の朱子学であり、これが官学であったと言ってよいわけだが、官に対する民とも私とも言える学問が存在し、その祖というべき存在が中江藤樹である、という説明は自分の理解した限りでは妥当なものに思える。
しかし、林家の朱子学は林羅山が藤原惺窩に学んだものであるが、惺窩自体がそれまでの学問の元締めであった文章博士家の統制を逃れて独立することに成功した存在であったと何処かで読んだ覚えがある。小林は藤樹が戦国の下克上の気風の中で現われてきた存在で、林家はそれに対立するものとのみしか描いていないが、林家もまた王法・仏法の支配した中世のくびきから逃れ、最大の戦国大名から公儀へと成長した徳川家の元で新たに権威付けられた、近世大名となりおおせた戦国大名のような存在であったと言うことができる。だからこちらもまた、近世的ないじましさを感じさせる存在ではあるが、下克上の中から出てきた存在であると言うべきだろう。
しかし、権力の庇護を一切受けなかっただけに、藤樹の独立不羈の精神は際立っている。そして彼ののちの古学の系統、国学の系統、あるいは史学・陽明学などの学者は多くの場合「市井の学者」として存在した。蘭学では杉田玄白・前野良沢ら藩に属した存在が多いように思われるが、これは高価な蘭書を購入するなどの必要から、主持ちでなければ出来ないという面があったのだといえるだろう。高野長英らそうでない例もあるが、少ないと思われる。
契沖もまた自らを「独り生まれ、独り死に行く身」と表現しているが、これは単に形而上のことではなく、徳川光圀から援助を得たりもしているがそれは彼の本意ではなく、そうしたことのなるべくないように心がけていた。
中江藤樹は母に孝行するために脱藩したエピソードが有名だがこれは感情的な動機というより孝の実践を最上位に置いた思想上の問題だと考えるべきだと小林は言うし私もそう思う。
ちょっと中途半端だが、忙しくなってきたのでまた後日続きを。
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