フランスの暴動と移民政策の行き詰まり/拘束されたフジモリ氏の真意

Posted at 05/11/10 Trackback(2)»

時事についてちょっと。

フランスの暴動は収まったといえるのかどうか良く分からないが、夜間外出禁止令の発令でだいぶ沈静化に向かっていることは確からしい。しかしこの措置の依拠する法律がアルジェリア戦争時代のものだということをアルジャジーラが指摘している。報道には当初イスラム系とかアフリカ系という言葉が出なかったが、それはフランスの「同化主義」政策の現われであるらしい。日本ではさすがにそういう報道がされるようになってきたが、フランスでは相変わらず「若者たち」というような表現になっているようだ。もちろんアルジャジーラの立場ではアラブ系ということをクローズアップさせたいわけだし、その分踏み込んだ報道になっている。翻訳がもう少し丁寧だといいのだが。

今回の事態を最も良く説明している言葉のひとつだなと思ったのはこの記事の中の「アルジェリアから1980年代末にフランスに来たジャーナリスト」であり、「三人の父親で、ペンキ屋やウェイターをして、今は職が無い」というメジアーネ氏のことばで、「自分の子どもたちにとって、私は文字通りの落伍者だ。子どもたちが私のいうことを聞いてくれるなんて期待するのが無理だし、誰も私みたいになりたくないよ。私は子どもたちがして欲しいことに『良いよ』と言えたことがないからね。しかも、ここは子どもたちが年中、何かを買いたいという圧力を受ける社会だからね」という。イスラム的な家父長的権力も持てず、また西欧的な生活力も持たない移民の二世にとって全くモデルとなる存在の無いフランス社会では、ただ暴発することしか若い世代にとって出口が無い、ということはあるかもしれない。

従来イラク戦争からカトリーナまで散々フランスに批判されてきたアメリカでは鬱憤晴らしのようにフランス攻撃が行われているらしい。こちらの記事を読むと、自分のことはうまく分析できないアメリカ人も他者については実に切れ味鋭く批判できるのだなとある意味感心した。移民問題についてイギリス的なマルチカルチャリズムと、フランス的な同化主義があるが、その双方が失敗して移民問題については出口が見えなくなりつつあるということをブログで読んだが、アメリカ的な「チャンスの平等」を広げると共に祖国との紐帯を立ちきり、アメリカ人として生きることを求めるというやり方もまたそうなかなかうまく言っているわけではない。しかしまあそれでもフランスのこういうやりかたよりはいいぞ、ということを言っているわけで、逆にこの問題の深刻さを浮かび上がらせる。

日本においては基本的にフランス的な同化主義が戦前などは取られていたわけだが、現在ではむしろ移民鎖国を行うことでこうした問題が広がらないようにしているということだろう。実際問題としてこの行き方が日本でのトラブルを起こさなくしている大きな要因だとは思う。グローバル化というのは要するにこういう問題を抱え込むことだなあと改めて思う。

フランスの同化主義も、特にアルジェリアに関しては植民地でなく本国の一部という位置付けも元来あったらしく、そのあたりがアルジェリアへの微妙な意識にもつながり、韓国人を見る日本人にあった意識(今ではほとんど完全に外国視されていると思うが、微妙なアヤまでは良く分からないが)とも似通ったものがあるということを書いているブログもあって興味深かった。

フジモリ元大統領がチリに渡り拘束された事件では、それこそ身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれではあるが、政権にあった時代でのチリとの関係を意識し、また拘束されることを見越して自らの行動の正統性を主張する機会も与えられるという見通しを持って行動したとこちらの記事を読んで思った。計算高い、というよりは氏はこうした起死回生の可能性に賭けることのできる真の政治家なのだなと思った。見事ペルー大統領に復帰して、また成果を上げていただきたい。

ブッシュ大統領は来日前に日本の報道各社のインタビューに答えていたが、なんだか少し自信喪失気味だなという感じである。これだけ叩かれれば無理もないとは言えるが、欧米の政治家でここまで気分が正直に出る人は珍しいのではないか。どこに行っても叩かれっぱなしで、まあ歓迎してもらえそうなのはネジが一本はずれた日本くらいなものだろう。なんとかサービスしておこうという感じだろうか。それよりBSE問題できちんと対処してもらいたいものだが。全頭検査すれば済むだけの話だけど。もし解禁されても、米産という表示があったら私は買わないしレストランなどでも食べないつもりである。

司法試験合格者、早稲田が2年連続トップだという。東大が二年連続して牙城を明渡したのかと思ったが、昨年は同数だったのだ。法科大学院出身者の試験が始まればまた様相は全く変わるだろう。司法制度もどういうものがいいのか私には良く分からないが、アメリカナイズが進んでいるという印象だけがある。時々なんとなくつけている放送大学のチャンネルでイギリスの司法制度のようなことをやっていたが、またイギリスもちょっと真似しがたいような独特な歴史的に構築された制度である。「改革」だけが行政を「良くする」ことではないのではないかということを思わずにはいられない。

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