ホワイトバンドについて考える/戦争は嫌だという気持ちの中身/ナルニア/法華経
Posted at 05/10/25 PermaLink» Trackback(2)» Tweet
昨日。あれこれ物を片付ける。どうも体調がいまいち。季節の変わり目、なのだろう。
昼下がりから銀座に出かける。秋は空がきれいだ。雲の色も、空そのものの色も、きれいだ。郵便局に寄ったり銀行に寄ったりして支払いの準備を済ませる。駅の自販機で日経の夕刊を買う。経済が多少なりとも分かってくると、50円でずいぶん楽しめる。高い金を払ってつまらない本を読む必要もないなと思ったり。
久しぶりの銀座。ただ単に歩くだけでも、気持ちが少し明るくなる。教文館で文春新書と河出文庫の目録が置いてあったので何か購入してついでに貰おうと思って物色し、結局鴨下信一『誰も「戦後」を覚えていない』(文春新書、2005)を購入。少し読んだが、戦後の混乱期は誰もがちょっとした盗みのようなことを働き「頂戴した」とか「交換した」とか言い換えて自分を納得させていた、というようなちょっと苦い話が並んでいる。われわれの世代にはわからないが、「戦争は嫌だ」という思い出の中には、そうした思い出したくない自分を誤魔化した過去のようなものが含まれているのではないかという気がする。このあたりは、確かに孫子の代に伝えられない話だろう。そうせざるを得なかった苦さのようなものも理解しないと、戦争体験の語り継ぎというのも単なるきれいごとになってしまう。
6階に上がり、『ナルニア』シリーズのカラー版の『銀のいす』と『馬と少年』を買う。これが本来教文館に行った目的だったのだが、最近なんとなく買いそびれていたので宿願を果たした感じ。購入すると教文館6階の児童書コーナー(その名もナルニア国)オリジナルのクリアファイルをいただいた。やはりほかの書店で買わなくてよかった。隣の喫茶で日経を読んだりクリアファイルを眺めたり。
銀ブラ。横丁に入ったり、鳩居堂を冷やかしたりしながら旭屋書店へ。いろいろ物色しながら美輪明宏『ほほえみの首飾り』(水書房、1889)という本を見つけ、買う。美輪明宏は最近は女性向けの話を書いていることが多いが、この本は南無の会という仏教勉強会みたいなところで喋ったもので、男性に向かって話している感じがあるのが新鮮である。例によっていろいろ面白いが、「龍女成仏」の話が出てきた。これは先日拝見したお能の主題なのだが、私は法華経を読んだことがなかったので美輪氏の解説が詳しく勉強になった。そのあとネットで調べると法華経全文をアップしているサイトがあり、それをちょっと読んだりした。A4で印刷しようとしたら100ページ以上になってしまったため読みたいところを少し読んでみただけなのだが、確かに魅力的なお経だと思う。中公文庫の大乗仏典で出ているようなので、またそのうち探してみようかと思う。
そのまま帰宅。夜はこれということも意識しないうちに本を読んだりものを書いたり勉強したりしていたら過ぎていった。クローズアップ現代で甲子園に出場するための他県への野球留学の問題を取り上げていた。野球留学などの場合、その道で挫折するとその学校にも居続けにくいし、ドロップアウトしてしまうことがありがちなのだけど、その問題については取り上げていなかったのが気になった。特待生など入学の際に優遇されていたらなおさらだろう。スポーツの面からだけでなく、教育という側面からも光を当ててもらいたい問題である。
ホワイトバンドの問題について考えたりする。サイトを見てみると、どうもこれは反グローバリズムの政治運動だと考えるべきではないかという気がする。直接の人道支援のための慈善活動でないことをあまり明確に示していなかったことが波紋を呼んでいるが、日本人の感覚としては「人道問題」と「政府に対し何かを要求したり自分の決意を表明したりすること」とは別問題だという現実に、意識的にか無意識的にか無頓着であったのだと思う。慈善だと思って寄付したら宗教団体だったとか、(宗教団体はチャリティーにおいて大きな役割を果たしているのは事実だが、非宗教的な団体に寄付することを好む人のほうが日本人は多いだろう)自分の権利を守るために労働組合に入ったら反核運動に動員されたとか、何かの意思を思想や政治に利用されることへの不信感のようなものが強くあるように思う。
どうせ慈善に寄付するならかっこよくファッショナブルな方がいいと思ってお金を払った人の中には、どうも自分の思った活動と違うと思い、不信感を持った人が多いのだろう。
現代の日本人は慈善や人道においては直接性にこだわるし、政治や思想的なムーブメントを通して世の中を変えようという動きに警戒感を強く持っている。これは私自身も理解できる感覚だ。たとえば、赤十字などの非政治的な団体なら安心して寄付できる、というような。
よく考えてみるとこれは皇室の社会貢献とよく似ている。赤十字の総裁を務めたり、あるいは全国植樹祭に出席したり、がん撲滅運動に賛同したり、そういう政治性のない運動ならば皇室も安心して貢献できる。そうしたいわば思想的カラーのない運動なら安心して寄付できる、という感覚は結構広く共有されているのではないかと思う。
慈善ということに関しては、これもまたひとつの事業なので、自分の善意に躊躇を感じて寄付を思いとどまる、などというのは少々自意識過剰であるし、世の中の歪みを少しでも直すことは「情けは人のためならず」であるから、どんどん寄付して何の差し支えもない、と思う(変な団体に寄付することはよくないが)。良いことをしていると驕り高ぶる必要もないし、いわば「自発的に払う税金」のようなものだと私としては思っている。コンビニの小銭の寄付で命拾いする人がいるなら、すればいいと思う。阪神大震災のときに小林よしのりが書いていたが、まさに「同情するなら金送れ」であるろう。
アフリカの問題も何とかしなければならない(実際には経済的自立=産業化のための援助と、文化伝統の保持と近代化の調整など難しい問題があると思う)が、私としてはまずは微力なりとも拉致被害者の救出のための活動への協力が優先だなと思う。
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