支出の倫理/凋落する朝日新聞
Posted at 05/10/06 PermaLink» Tweet
信州は寒い。昨日はついにストーブをつけたのだが、今朝は思いなおしてホットカーペットを出した。どちらの方がよいのかはわからないが、暖房ゼロというのはちょっときついときがある。足元の冷えの防止から言えばホットカーペットだろうか。
山本七平を読んでいて、日本人は収入についての倫理、つまり悪い稼ぎ方をしてはいけない、という倫理は持っているのに支出についての倫理、つまり悪い使い方をしてはいけない、という考え方が希薄だ、という話が出ていて、なるほどそうだなと思う。「何をして稼ごうと勝手だ」というのは通らないと言う気がするが(と言ってもそれが本来職業選択の自由と言うことなのだろうが)、「何に使おうと勝手だ」と言うのは人を納得させる言葉であるように思う。
しかし山本の言うように悪い支出というのは人にとってみれば悪い収入になる、というのはもっともである。私自身、支出ということにそういう意識をあまり持っていなかったが、それは「何に使ったの!」という問いへの反発であったのかもしれないと考えていて思った。それに対して内心「何に使おうと勝手だろ」と思っていたわけだが、まあ人に言われる前に悪い使い方をしないと言う心がけがあったらそこでそういう相克はなくなるわけで、これはかなり重要なことだと思う。子どもに自由にお金を使わせる、あるいは子どもに与えた金銭の使い方を「何に使ってもいい」としか言わないことが、子どもをターゲットにしたさまざまな社会悪に染まらせる最大の原因なのではないか。収入を得るという意味で自立するより遥かに早く、支出に関して「勝手」という意味で自立させるというのは問題が多い。「悪い使い方をしてはいけない」という支出の倫理を教える、あるいはこういう使い方がよい使い方だ、という例を示すということが、お金に関する倫理を教える上で大事なことなのではないかと思った。
考えてみれば、税金に関しても話は同じだ。国がどういう支出をするのかということに関してあまり関心が持たれないのも支出を倫理的に見ようという観念が薄いからかもしれない。金の使い方という問題、実はかなり奥が深い。
話は飛ぶが、「月刊全生」を読んでいて、ある観念について自分と対話することはその観念を身につけるために有効だ、という話が出ていて、「ただ自分と対話するだけではなくて、自分でこれが本当だという感情を持って、それを肯定していくことが効果をあげる方法なのです」と書いてあったが、上記の「支出の倫理」という話に関して自分に納まるものがあり、なるほどそうだなと思った。少なくとも今の私は「悪い使い方をせず、なるべくよい使い方をしよう」とか、「どういうのが悪い使い方で、どういうのがいい使いかたか」ということを使おうとするたびに考えるのではないかと思う。まあ倫理というのはそういう風にしてしか身につけることは出来ないのだから、まあそれで十分すごい効果があったということになるのだと思う。
一方で、自分との対話で自分の感情を出していろいろ考えることは自分の感情が広がってどうにももてあましてしまうことになる、「感情の問題は相手の中からどんどん拾っていく、拾っていかないと感情は自由にならない」というのもその通りだと思った。自分の感情の問題を考え始めるとそれにとらわれて自縄自縛になる、というのは実に私自身が陥りやすいことなので、ああそんなことなんだなと納得する。まあだからといって自分が感情にとらわれず自由自在に動けるかというとまあなかなかそうはいかないが、感情にとらわれないコツのようなものはそこにあるように思った。
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BSE問題、ついに輸入再開に向かうのか。これはもしかすると小泉政権の終わりの始まりになるかもしれない。後1年といっているが、1年持たなかったらどうなるか。
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私が子どものころ最初に乗った記憶のある車は、父が運転していたスバル360だった。富士重工という重厚な名前の会社がそれを作っているということを知ったのはもちろんだいぶ後だが、その富士重工がトヨタ傘下に入るという。今までGM傘下だったというのも知らなかったのだが。スバルをトヨタが作る、というわけではないが、なんとなくそんなことを考えて変な感じがしてしまう。
* * *
最近朝日新聞の凋落の著しさを感じる。実家でも朝日の購読をやめたと聞き、ちょっと驚いた。うちは三代教師が続いていて、こんなうちが朝日の購読を止めるようでは、いったい誰が取るんだろうという気がする。私自身は数年前に東京の自宅の留守が多くなってからそれを口実に勧誘を全て断っている。林道義氏のサイトでも朝日の購読を止めた、といっているし、内田樹氏のブログではご本人と母堂と連絡したわけでないのに同時に購読を止めた、という話を立て続けに読んだ。内田氏は朝日新聞の不祥事とそれに対する弁明のしかたの悪さが「朝日離れ」の原因で、800万読者が数年で200万くらいは減るのではないかと見ている。このまま行けば、朝日がもし態勢を刷新して良質の紙面になっても、200万も減少すれば販売店網の態勢が維持できなくなるだろうから、宅配制度そのものの危機がやってくるのではないかという気がする。そうなると新聞の凋落は決定的なものになるだろう。オピニオンを看板にしている報道機関が自らの身の処し方に不信を持たれたらばかばかしくて誰も取らなくなってしまうのは理の当然だろう。朝日が本当に態勢を刷新し読者の不信の念を払拭することは相当困難なものだとは思う。内田氏はそこには楽観的なのだが、さてどうなのだろうと私は考えてしまう。
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