サヨクはなぜサヨクなのか/処女性とナショナリズムは邪魔なもの
Posted at 05/09/27 PermaLink» Tweet
先日紹介したこちらのクイズだが、ネタもとのマイネ・ザッヘさんが「サヨクはなぜサヨクなのか」という問いかけをしておられて、私もちょっと考えてみた。
個人的には、私は95年ショック、つまり阪神大震災に際しての社会党首班の無能ぶりと関西の自治体の自衛隊アレルギーによる被害拡大と、一連のオウム事件と政府のそれへの対応によって、心情的左派リベラル支持から自民党支持へと大きく転回したのだが、サヨクの思想というものがおかしいと感じ始めたのは80年代の朝日新聞報道が韓国・中国べったりになってきたころからだった。心情左派といっても基本的にはノンポリで、さまざまな政治的主張に耳を傾けてこのへんかなと思っていたに過ぎないので教条の強いところにはあまり近づけなかった。気がつかないで近づいて虎の尾を踏んだりしたことはあったにしても。
で、まあこのブログの読者の方は私の政治的ポジションを右だと思っている方が多いと思うのだが、このクイズによると「大きな政府」派よりの中間派に過ぎない。「ウヨク」呼ばわりされている多くの方もこのクイズではリベラル派に入る人が多かったらしく、マイネ・ザッヘさんのブログのコメントも新鮮な驚きで大賑わいのようである。
つまり逆に言えば、自分は「右派」だと思い込まされていた人たちがなんだ実は自分はリベラルだったのだと目から鱗が落ちた、と驚いているということである。
そうすると必然的に、ではサヨクとは何だ?ということになる。
アメリカでも近年民主党支持から共和党支持に移る人が多いらしく、民主党はおかしな集団にのっとられた、と感じている人が多いという。日本ではそれはずいぶん昔から進行しているとは思うが、やはり実感として感じられたのは80年代の変化だろう。つまり、戦前世代が社会の中核を担っていた70年代から戦後第一世代、つまり団塊の世代が実権を取り始めた80年代にかけての大きな静かな変化により相当大きな変質があったように思われる。
もちろん、敗戦による大転換というのは大きいし大きく言って戦後史全てはそのトラウマから始まっているわけだが、自分自身に実感として感じられたものではないのでよくわからないところが多い。しかし、「知識人」のさまざまな言説が飲み込みにくくなり始めたのは80年代だったことは自分の経験で感じている。
この話し、今これ以上展開する気はないが、サヨクって何だ?という問題設定自体、今求められているものだなと思ったことだけ記しておこうと思う。
***
古田博司『東アジア・イデオロギーを超えて』読書中。中国・韓国の中華思想の分析については非常に面白いのだが、日本の政治思想の分析には偏ったものを感じてしまう。ただ、それはもう政治的スタンスに由来するとしか考えようがないので頭の中で理論闘争を展開しつつ読み続けている。こういう読書は疲れるが、こういう作業が今まで不足していたことも事実だなと感じている。
この中で中国・韓国と日本はそれぞれが「排外的な中華思想」を分有していたと見るが、現在の日本と両国の違いは丸山真男の言うところの「ナショナリズムの処女性」の違いから来るという嫌らしい議論がある。つまり、日本は維新から敗戦までの過程でナショナリズムの「勃興・爛熟・没落のサイクルを一応完結し」て処女性を喪失した、というわけである。比喩の用い方は現在のサヨク方面の方々からはクレームがつきそうだが、私はそれよりもナショナリズムと「処女性」には共通点がある、ということ自体が面白く感じられた。
つまり、現代日本においては「ナショナリズムと処女性は邪魔なもの」なのである。つまり、性交渉をそう求めているわけではなくても処女性を維持していること自体が特定の思想(あるいは事情)を持っていると見られてしまって「重い」と感じられるということである。
裏返して言えば、本来処女性、あるいは童貞性を尊重するのは「純潔の矜持」から来るものであり、日本ではそうした矜持自体が「重い」と感じられているわけである。藤原新也氏のサイトの写真で女子高生の「矜持ゼロ」を誇示している写真にそれが現れているが、この写真に「日本をあきらめない」と題をつけたセンスで私は藤原氏を見直した。ナショナリズムというのも本来ある国家の国民であることの矜持のことであると私は思うから、「国民としての矜持」を重く感じる国民性と処女性を重く感じる国民性は同じ病巣から発していることは明らかだと思うのである。
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