新党日本と民主党/「小日本主義」の行き着くところ
Posted at 05/08/22 PermaLink» Trackback(1)» Tweet
田中康夫と小林興起を代表・代表代行とする新党日本が結成された。昨日はこの背後に派小沢一郎がいるのではないかという観測について書いたけれども、その後田中・小沢に近い人たちの映像やブログを見たり、あるいはいかにも歯切れの悪い岡田代表の発言、東京10区民主党鮫島候補の発言を読んだりしていると、どうもやはりその線かなと思う。まだまだはっきりしない点が多いが、このあたりはおいおい見えてくることだろうと思う。あまりにやり方が下手な場合は、表に出てくる前に小沢側から切り捨てられる可能性もあるが。
今朝は西の空が朝焼けで、写真を撮ろうと思っていたのに取り損ねてしまった。空はとても曇りっぽいが、朝から蒸し暑い。
* * *
小日本、というと今では中国の反日運動で日本を蔑視する用語として使われる言葉であるが、戦前石橋湛山らは「小日本主義」を唱えていた。簡単に言うと、朝鮮半島などを放棄して、日本は列島に閉じこもり、貿易立国を目指すべきだという思想である。もともとにはイギリスで帝国主義政策を推進する保守党のディズレーリに対抗し、自由党のグラッドストンが唱えた「小英国主義」に由来することは言うまでもない。
石橋らの小日本主義は、敗戦後の経済復興と高度成長が現実のものとなったとき、高い評価を受けた。石橋の評価も、戦後の大蔵大臣や総理大臣の時代のものよりは、大正から戦前期の評論活動による部分が大きい。
しかし、日本全体の「小日本主義」は敗戦前から始まっていたような気がする。敗走を重ねるにつれ戦線を縮小し、守備していたところを放棄して後方に退く。そこには膨大な捕虜や難民が生じ、満州におけるソ連兵の虐殺や暴行、膨大なシベリアへの強制連行(一説には百万を越える)と残留孤児の発生、苦難に満ちた引き上げ行。全島が実質的に強制収容所に収容された沖縄。いまだに取り戻せない北方領土と、まさにほとんどなすすべなく日本は縮小し、本土の政府・住民も自らが耐え難きを耐え、総懺悔して「負けっぷりを良く」しているのみで満州や沖縄の同胞の苦難を忘却しているうちにギブミーチョコレートでアメリカ頼みの心性がこびりついていった。
結局、大東亜共栄圏が一場の夢、幻想であったという認識は、国土や国民に対する深く強い意識も奪い去っていった。沖縄では熱烈な本土復帰運動があったのに、本土側ではむしろ冷めていたのではないかと当時の記録を読むと思う。沖縄が左翼色が強くなったのは、小林よしのりも書いていたが、確かにそういう背景があったのではないかという気がする。
佐藤栄作は沖縄復帰が日本国にとってこれ以上ない外交的勝利であり、それを誇示したかったのにマスコミはあまり評価しなかった。そこにすでに、戦前型の強い国土意識、国土防衛意識を持った佐藤と戦後型の「小日本主義者」たちとの溝が現れているような気がする。
韓国による竹島侵略問題といい、中国による尖閣をかすめとらんとする策謀、東シナ海上の地下資源強奪の強行などについても、とにかく日本国民の「小日本主義」的領土意識があまりに希薄であるところからほとんど盛り上がりを見せないのだといってよいように思う。最近では沖縄の左翼に対する違和感、あるいは本土に対する反感の強まりなどを見て沖縄が日本から分離独立したほうがいいんじゃないかと考える人も少なからずいるような気がする。
こうした雰囲気は、「小日本主義」がある意味結果したところなのではないか。竹島は韓国の主張のほうが正しいとか北方領土はもうロシア人が住んでるんだから取り戻すのは無理だとか、半分左翼的な国土放棄的な主張でありながら、それがむしろ経済合理性の当然の帰結のように語られつつあるところが気になる。
最近では、沖ノ鳥島など単なる岩で守るに値しないとか、離島に人が住むのは生活防衛コストが行政にかかりすぎるからもう住まないようにすべきだとか、中越地震の被災地のような山間部も人が住むべきでないとかいった主張がテレビなどでもかなり平気でなされるようになってきている。国土・国民を守る国家の義務というものですら、経済合理性の範囲内でなされるべきだという主張が、世界の政治的合理性からは極端に奇妙なものであることが見失われているのではないかと思う。しまいには関西のやつらの言うことは良くわからんからもう関東だけで独立しようとか、イタリアの北部同盟的な発想すら出てくるのではないかという気がする。
国土・国民を守るのは国家の義務であると同時に権利でもある。海外にいる日本人を守るのも、国家の権利である。19世紀には宣教師が殺されたという理由でフランスが中国に宣戦布告するなど、国家にとって決して譲ってはならない義務であり権利なのである。
最近、イラクで人質になった3人のことに対する考え方もかなり変わってきた。あの人たちはやはり愚かな行動だと思うし偏った思想に基づいているとは思うが、日本国民であることに変わりはない。だから日本国としては何はともあれ無事救出を最優先で図るべきで、そのためにはさまざまな飴と鞭をも使うべきであったのだと思う。官邸のヒステリックな反応や自作自演説などが出てきた背景には、結局国家の義務を果たし権利を主張するという当然のことを憲法に縛られてできないという非常に強い不満が裏返しになって現れたのではないかという気がする。
あの自己責任論の高まりは、国家事業としてやむを得ず行っている自衛隊派遣の障害になることをするべきではないという意識が私などには強かったのだけれども、むしろテロを日本に呼び込むようなことをするなという危機意識、お前たちが勝手な行動をしたおかげで日本が窮地に立たされたらどうするんだと慌てふためく意識の方が全体的には強かったのかもしれない。その意味で、本当はこれこそが「小日本主義」の表れだったのだと思う。
どんな人間でも日本国民であり、海外にいる日本人はある意味「日本のかけら」なのである。日本のかけらを守る義務と権利を持っているのは日本国家だけである。邦人保護というのは単に個人の生命・財産を守るということだけでなく、日本の国民、日本の財産を守ることだというのを忘れてはならない。そのために必要な仕掛けが、そしてそれ以前に意識が、やはり日本には根本的に欠落しているのだと思う。
海外では自己責任が基本だ、というのは全くそのとおりだが、というか日本国内にいたって自己責任が基本なのだが、国家はそれをサポートしなければ国家が存在する意味がなくなってしまう。もちろん何でも軍事的に解決すればいいというものではないが、話の通じる相手には話を通じさせ、力による恫喝が通用する相手には力を用い、金で済む相手には金を使う、ということをせざるを得ない場合もあるだろう。日本が自らの正義を一貫させるためには、「小日本主義」に安住していてはいけないのだと思う。
そう考えてみると、靖国の英霊も決して「自らの意に反して戦場に散った犠牲者」ではなく、日本の国土と国民を守った英雄たちの霊であることが実感されるはずである。
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from 詩 at 05/09/14
今の日本国家が始まって60年 ついに一党独裁政治が始まるよ! さて、日本はどうやって崩れていくのかな!? 楽しみだね 愉快だ 今の日本国家が無くなる歴史を見ることが出来るかもしれない 国家という物は、どんなに長くても300年で潰れるものだ (例外もある
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