「表現者」/小泉サプライズと満州事変/中国問題をどうとらえるか

Posted at 05/08/21 Trackback(2)»

日記のテンプレートを変えてみる。フォントが小さくなってしまったのが難点だ。私はこのサイズのフォントはあまり読みたくないのだが、どうもいいデザインでフォントが大きいものがないようで困る。もう少し物色していいのがあったらまた変えようと思う。

東京は暑い。残暑が最後の力を振り絞っているかのようだ。信州はもう朝夕はかなり涼しいのだが、東京の夏力はまだまだ強力だ。周囲は夏祭りの季節らしく、御神輿がテントに並んでいたりする。

夕方、町に出かけ、本屋で本を物色。1週間前とは品揃えがかなり変わっていて、そういうあたりにそこはかとなく秋を感じる。駅前の文教堂では欲しいと思う本はなかったが、神田に出てみることにする。

三省堂から東京堂を物色し、目に付いたのが『表現者』という新しい雑誌。これは西部邁が以前発行していた『発言者』という雑誌が終了したのに変わり、同誌の執筆陣が新しく立ち上げたもの。『発言者』のときより編集人が若くなったせいか、私が読んで面白いと思う記事が多くなったような気がする。今号の特集は『失われた10年』ということで、対談が二つある。

御厨貴・西部邁・新保祐司「表現としての政治史」は御厨の「オーラル・ヒストリー」をテーマに取り上げ、『宮沢喜一回顧録』を取り上げている。「オーラル・ヒストリー」の取り組みについて色々話し合われていて、なかなか興味深かった。またもうひとつの対談佐藤優・大窪一志・富岡幸一郎「理念なき日本外交」も、『国家の罠』の佐藤優の学識が非常に深いということがよくわかり、興味深い。神学的・哲学的な部分は分かりにくいところが多いが、他国・他文化を相手にする外交というものが、どれだけ深い文化的理解を必要とするかということはおぼろげながら感じ取れた。

東京堂でそれを買ったあと、淡路町まで歩いて『やなか珈琲店』でコロンビアを300g買い、丸の内線で東京に出てTeatsuで静岡茶を二種類50gずつ買う。八重洲側に歩いて出てジントニックを飲みながらカレーを食べて帰る。

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地下鉄に乗り降りしながら考えたのだが、小泉首相という人を今までの歴史上の誰かに例えるならば、ひょっとしたら石原莞爾ではないかと思った。昭和6年、内閣は小泉首相の祖父の小泉又二郎を逓信大臣として含む民政党・第二次若槻礼次郎内閣であったが、前年に浜口雄幸首相が東京駅で狙撃され負傷し、首相を若槻に譲って療養するも8月26日に死去した。その直後の9月18日に石原が首謀して起こったのが満州事変である。結果的にこれが大成功し、翌年満州国の建国に至る。国民はこぞってこれを熱狂的に支持し、幣原協調外交路線は破綻して若槻内閣は退陣、12月13日政友会の犬養毅内閣が成立した。犬養道子によると「支那のもの(満州)は支那へ返せ」という主張を持っていたという犬養毅は翌年の5.15事件で暗殺される。

つまりどういうことかというと、満州事変というのは石原という個人が(もちろん回りも巻き込んだが)計画し実行した「サプライズ」であったということである。柳条溝事件から錦州爆撃、溥儀担ぎ出し、満州国建国と次々と流れるように次々に「サプライズ」が実行されていった。明らかに国民はこれらの手品のような仕掛けに驚喜し、陸軍への期待と信頼感が一挙に高まった、と言えるのではないか。政党内閣側はこれに抗すべくもなく、一気に軍部一般への支持が高まった。このようなサプライズを計画し実行することにおいて、小泉首相と石原は良く似ている。

しかし違うのは、石原が関東軍の作戦主任参謀に過ぎず、小泉首相のように国内最大の権力を握っていたわけではないということで、その筋では有名であっても国民大衆には無名の存在であっただろうということである。つまり、石原のサプライズは石原の功績として認識されることなく、陸軍、あるいは軍部という無名性の支配する官僚組織自体の権威が高まるということを結果したのである。今回の郵政解散劇を主導しているのは誰がどう見ても小泉首相個人であり、自民党なり内閣組織なりは首相に引きずられてそれに従っているに過ぎないことは良く見て取れる。だから今後、変な暴走を組織全体がすることはあまり考えられないが、無名の中堅将校が巨大なサプライズをやってのけたことが、その後の関東軍の、あるいは軍部全般の実力や情勢を十分に認識しないままの戦略展開につながっていったのだと思う。軍で最もあってはならない下克上の状況を生んだという点で、石原の責任は重いと私は思う。

石原は世界史の構想力という点では確かに面白い物を持っているが、やはり天才にありがちな自己過信と独りよがりによって日本の針路を捻じ曲げた責任はあると思う。結局路線を最後まで修正できず、無理に無理を重ねていくことになる。あの時点でどのような外交・軍事政策が適正なものであったのか、あるいは満州事変のような非常手段をとるしか日本に道はなかったのか、そのあたりの検討はもう少しなされてよい。

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山東省で中国とロシアの合同軍事演習が始まった。テレビの画像で見るとかなりの地上戦を想定しており、まあ普通に考えれば台湾上陸作戦の能力を誇示しているとしか考えられないだろう。台湾の次のターゲットはどこなのか、そういうことも考えておいた方がいい。

郵政反対でポストのマークのネクタイを締めて先頭に立っていた荒井参議院議員が自民党を離党し、小林興起氏らと都市型新党を作ると報道されている。その党首に迎えようというのが田中康夫長野県知事や堺屋太一氏らだというが、こっちもサプライズ狙いらしい。しかし、どうなんだろう。ちょっと実現性はなさそうに感じるが。

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中国でガソリンの値段が高騰し、品不足も強まっているという。一番簡単な解決方法は、人民元の切り上げだろう。元の価値が上がれば原油の輸入価格は下がるから、ガソリンの価格は安定する。中国の経済政策当局がどのくらい資本主義や市場経済のことを理解しているのかは良く分からないが、経済の統制を取り払うことにはおそらく非常な恐怖を感じているに違いない。しかし統制経済でこれ以上は無理だろうと思うし、もちろん政治的な強権体制もそろそろ限界に来るだろう。さて何をきっかけに中共支配が崩壊するか。

アメリカは突然また中国に物申す方向に姿勢を転換したようで、胡錦濤の訪米直前だというのに軍備拡張と人権問題について非難している。まあもちろん両者とも重要な問題であることは間違いない。

しかし私としては、チベットや台湾、内モンゴルや東トルキスタンの民族問題、あるいは自治・独立の問題についてもっと関心が高まることを期待している。現存政府のある台湾を除いては中央政府・亡命政府の存在が一番はっきりしているのはチベットなので、日本としてはぜひ台湾・チベット支援を進めてもらいたいというのが私の個人的な意見である。ロシア国内でももっと民族的な独立の動きに支援があっても良いと思う。チェチェンのようにテロリズムに走るとそういう世論がおきにくくなってしまうけれども。中国の中華思想、ロシアのユーラシア主義という語の本来の意味における「帝国=多民族支配国家」思想は強力ではあるが、それの解体が行われない限り、アジアにおける冷戦は終わらないのだと思う。

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