日本の国際政治におけるリーダーシップ
Posted at 05/08/10 PermaLink» Tweet
北村稔『中国は社会主義で幸せになったのか』(PHP新書)読了。清朝末期から現在の反日喧伝に至るまでの中国の近代史を、民国時代、日中戦争期、大躍進政策・文化大革命の悲惨などを中心によくわかるように述べている。近代中国史は基本的に中国共産党史観によって書かれたものしか存在しない、というか目にしていなかった、いや最近は黄文雄なども読んでいたがどうもわかりにくかったのだが、これはかなりすっきりと整理された通史であった。中国近代史に少し本腰を入れて取り組まなければならないなと自覚する。
それでこちら(実家)にあるはずの黄文雄の孫文について書かれた本を探しているのだが、見つからない。民国時代の軍閥との戦争などについてかなり細かく書いてあってそのへんが読むのが面倒になり途中で放棄してしまったのだが、いまならかなり読みこめると思ったのだが。何しろ黄文雄は似たような題名の本が多くてGoogleで探してみてもどの本だか見当がつかない。多分自分の本棚を探した方が早そうなのだが、こちらで見つからないとなると後はどこにあるのだろう。ちょっと困った。
ふと考えてみると、周恩来はフランスに留学したときに共産党に入党しているのだが、ポル=ポトもフランスで入党しているはずだということに思い当たった。あまり言われていないが、フランス共産党のアジアの共産化における役割というのはどういうものだったのか。コミンテルンとの関係は。スターリンという人は基本的にはドメスティックなことにしか関心がなく、コミンテルンも主要任務はソ連を防衛するために周辺各国に共産党の勢力を扶植することしか考えておらず、とてもとても世界共産化などおぼつかない感じだったと最近では私は考えているが、まあそういういわばロシア人らしいいいかげんな態度が各国の共産党と20世紀の世界の歴史にもたらした混乱は酷いものがあった気がする。
先ほど『大紀元』を見ていたら、ニューヨークに本部を持つ『新唐人テレビ』という中京を批判する唯一の衛星テレビネットワークの話が出ていたが、中共当局はやはりこのテレビ局を目の仇にしていて、中国の一般家庭が衛星のアンテナを持つことを禁じた、という話が出ていた。大紀元によると、現在この新唐人テレビの視聴者は中国全土で数千万人に上り、中国各地で発生している伝染病などについて報じているという。新唐人テレビという存在についてははじめて知ったのだが、やはり現在の中国の改革運動・反政府運動の拠点はアメリカなのだなと思う。
日清戦争以来、アジア各国の民族運動の拠点が日本にあったことを考えると、現在の状態はさびしい限りである。特に中国の近代化にどれだけ多くの日本人が関わってきたかということを考えると、日本が当てにされていないという現状は、日本にとっても決してよいことではないように思う。アジアの近代化を追求してきた日本人は、今は完全にそうしたアジアの運動には背を向けているように思われる。それは、大東亜戦争の失敗とアジア各国からの糾弾によって日本人のプライドが完全に傷つけられたからだろう。全般的に、現代の日本は脱亜状態にあるし、ルックイーストなど向こうから関心をもたれることもどちらかというと煩がっているというのが現状だろう。アジアからの声はいいこともあるが相変わらずの中韓の日本脅迫などマイナスの方が強く感じられるので、聞く気にならないのである。文化的なことに関心がないわけではなかろうが、エスニックなものに対する関心に基本的にはとどまっている。
カワセミの世界情勢ブログの8月8日の記事に指摘されているのを読んで改めて思ったが、日本人は現在でも相当プライドの高い、誇り高い国民であることは間違いない。しかしそれがかなり韜晦した形で現われているために妙な見え方をしているということなのだろう。日本の国内政治や国際政治が対米関係によって非常に強く規定されていることは間違いないし、それによってアジア各国の反体制勢力も日本を当てにできない、アメリカに頼るしかない、と見えるのだろうし、その判断が外れているとは言いにくい。だから結局、みな日本を素通りしてアメリカに頼っていく。しかし、アメリカが本当にアジア情勢に関心を持っているとはどうもあまり思えない。だからアジア各国の反体制勢力も今一つ大きな展開を見せられないでいるということだろう。そうした隙に中国は大国としての地位をアフリカ外交などで展開しようとしているようだが、どうも現状は悲惨なようだ。これも大紀元情報だからなんとも言えないが、ODAで送り込んでいる労働力は囚人だとか、HIVやエボラ出血熱が中国にかなり持ち込まれているとか、恐ろしげな情報が多い。
このように考えてみると、世界におけるリーダーシップの問題について考えざるを得ない。ロシアがリーダーシップを取った世界共産化は20世紀に大混乱をもたらした。イギリスがリーダーシップを取った近代化と植民地主義は利便性は向上させたが環境破壊や貧富の格差の拡大などの大きな問題をもたらした。現在アメリカがとっているリーダーシップはあまりに非寛容でイスラム諸勢力の強い反発を招いている。かといって、イスラムのリーダーシップで世界が動いていくとはやはり考えられないだろう。
そうした全体像を描いた中で、19世紀から20世紀前半にかけて日本がアジアにおいてとっていたリーダーシップをどのように評価すべきか、もう一度考え直してみる必要がある。もちろんうまく行った点ばかりでなかったからこそ最終的には失敗に終わったわけだが、現在でも東南アジアや台湾などを中心に日本待望論があることを考えると、ロシアやイギリスやアメリカ、あるいは現在中国が展開しようとしているリーダーシップに比較しても、日本のリーダーシップの長所はあるはずだし、それを分析して自覚することは現在の日本にとって最低限必要なことであると思う。
世界を権力闘争の場所とのみ見てしまえばリーダーシップの良し悪しというような観点はなくなってしまうが、世界史のある時点においてある国家、ある国民が主導的な役割を果たすということは世界史を公平に見れば当然あることである。日本の果たした役割は大部分は東アジアに限定されたものではあったが、たとえば日露戦争の勝利の衝撃は世界的なものであったわけだし、そうした観点からも見なおしてみなければならないと思う。
軍事的な覇権はそうしたリーダーシップの重要な要素ではあるが、軍事力のみで世界をリードすることができないのは、古くはアッシリア帝国の崩壊から現在の中共の世界戦略やアメリカの中東政策の蹉跌の状況まで枚挙に暇がない。軍事力プラスアルファの、そのアルファの部分の性質が重要なのだと思う。
日本はそういう意味で世界史の進化に貢献すべき国であると思うし、またその力を持った国であると私は信じている。
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