小野田さんと靖国/ジャスコ岡田を見た/久しぶりに靖国神社に参拝
Posted at 05/06/27 PermaLink» Tweet
自分にとって、とにかく「書く」ということが大事らしい。「書く」といってもキーボードを叩いているのであるが。ただ叩くより、おそらくは万年筆ノートに、あるいは毛筆で半紙に、あるいは鉛筆で裏紙に書き付けるほうがより「書く」という行為に近いのだろうけど、現在のところ、「書く」ということの最終段階、すなわち清書はどうしてもキーボードを叩くことになってしまう。自分がキーボードを叩かなくても人の目に触れる文章を書けるようになるといいのだが、書くスピード、修正する手間のことなどを考えると、結局この「叩く」という作業から完全に逃れることは難しいだろうと思う。というのは、今朝いろいろなことを書きながら感じたことである。
昨日は、とにかくきっかけをつかむつもりで出かけ、新橋の書原に行ってみる。場所がよくわからず、炎天下を迷った後、見つけたが閉まっていた。日曜日のオフィス街だし、半分は織り込み済みなのだが。新橋の駅に戻り、尾道ラーメンというのを食べてみる。店の中が少々独特の臭いがして、自分の趣味とは言いがたい。やはり私の味覚は東日本系なのかなあと思ったり。食事後、銀座を彷徨いまず福家書店へ。どうもぴんとくるものなし。教文館に歩く。いろいろ探したあと、結局『Will』8月号を買い、6階の喫茶室へ直行。漆喰の壁が落ち着く。客も少ない。こういう場所が好きなのだけれど、都心で客が少ない憩いの場所の『花の命』が短いことが多い。何とか維持していただきたいものだと思う。
『Will』では渡辺昇一の講和条約論は面白かったが、一番興味を引かれたのが小野田寛郎氏の「わが心の靖国」であった。生死不明のままルバング島で戦い続けた小野田氏は15年間靖国神社に祭られていた、という話がリアルである。彼は帰国したとき田中内閣から見舞金をもらい、全国からの見舞金も多くもらったが、それらを一括して靖国神社に寄付したのだそうだ。目の前で多くの戦友に死なれ、あるいは傷病兵に自決を迫らざるを得なかった小野田氏にとっては、せめてもの鎮魂の行為だっただろう。
しかしそれがマスコミに軍国主義に加担する行為と叩かれ、何十年もそのために戦い続けた『祖国』に嫌気がさして、ブラジルへ渡ったのである。その心中は察するに余りある。
特に印象に残ったのが、生きて帰ったものには子孫も出来、彼の祭祀が途絶えることはないが、若くして死んだ多くの英霊たちには彼らの祭祀を守ってくれるものは誰もいない、という話だった。過去と未来を貫く連続性の中に生きている人間として、自らの祭祀が絶え宙を彷徨う霊にならざるを得ないという不安は切実なものがあると思う。そうしたものは私も若いころには感じなかった、いや「死」というものが遠くにあった間は、といっても良いかもしれない。しかし40を越え、×イチで子どももいない現在、そういうことの深刻さというのはとてもリアルに感じられるようになってきた。お国のために死ぬということは辛いことではあるが名誉なことでもあり、天皇陛下をはじめとする全国民が額づいてその後生の平安を祈ってもらえるということがあるからこそ、命を懸けて戦うための決意が出来たという人も少なくなかったに違いないと思う。このような不安定な位置に靖国の英霊たちを置いているだらしなさは、現代に生きるわれわれが強く感じなければいけないことだと思う。国のために死んだ先人の遺徳を称えることは、万国共通の美徳である。
レモンティーと小洋菓子を食し、6階児童書のコーナーでナルニアを立ち読み。読みたい気持ちがまた強まる。とりあえず帰ろうと思い、外に出ると、「岡田さん、岡田さん!」の声。よく見るとジャスコ岡田が青いシャツで車椅子を押すパフォーマンスをしていた。それなりの人ごみになり、ジャスコを見られて嬉しそうな人がたくさんいたのがバカかと思ったが、同じ銀座でも数年前の都知事選のときを思い出してみると石原都知事の周りの人ごみは道路の端から端まで埋め尽くされていた感じだった。シャドーキャビネットの党首としてはちょっと人気が足らんようだな、と思う。
そのまま日本橋まで歩き、丸善を一周したあと東西線のホームに下りる。そのまま帰ろうと思ったのだが、せっかくだからと思い直し、九段下に出て靖国神社に参拝する。猛暑の中、ずいぶんたくさんの人が参拝にこられていた。もう7月のお盆の「みたままつり」の準備が始まっていた。カメラを肩にかけた外国人がやけに目に付く。アルバカーキ大学のTシャツを着ているヤツもいた。軍服制帽で日の丸を振っている小柄なおじいさんにインタビューしているやつがいる。参拝者へのインタビューは自粛して欲しいと靖国神社は張り出しているのだが。拝殿の前で拝礼。本殿では昇殿しておまいりしている人たちが見えた。沖縄でも組織的な戦闘が終わったあと、この辺りの日付が戦死の日になっている方が多いのかもしれないと思うと胸が痛む。
久しぶりに遊就館に出かけてみる。泰緬鉄道を走ったC56や大砲の展示を見る。塗りなおされて化粧されているのが返って痛々しく感じられる。冷房が良く効いていて快適な室内には若い人、特に子ども連れが多い。何も買わなかったが、大砲の後ろのベンチでしばらくぼおっとした。
外に出ると、背広に救う会の青いリボンをつけている人が目に付く。あとで報道を見たら、座り込みの前に靖国に参拝に来た人も多かったらしい。政府が国民を守らないなら、英霊にその加護を願うしかないだろう。全く切ないことである。
中門の前の茶屋にはどちらかというとお年寄りの人がたまっている。飲んでいる人も多い。ハーモニカで渡辺はま子の「愛国の歌」を吹いていた。「真白き富士の 気高さを…」とつい私も口ずさんでしまう。
しばらくいっていなかったせいか、久しぶりに参拝して少し心が晴れた。
神保町まで歩き、ネットで見た喫茶室エリカに行ってみるが、休み。『珈琲時光』で映画になってから、客層が変わったという話だった。しかし、神保町と水道橋の間はアダルト関係の書店とDVD屋などが軒を連ねている。昔はこんなことなかったような気がするけどなあ、と首をひねる。今いったい、この業界の産業規模はどのくらいなのだろう。
三省堂・ブックマート・東京堂と物色して、結局『月刊松下村塾』なる雑誌を買う。長州系に偏っているものの、幕末史関係の写真が多く収録されていて、まあ680円はお得かもしれない。特集は伊藤博文。PRINTS21の安野モヨコ特集を少し立ち読みして帰る。
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