都美館「アール・デコ展」/日本は「中国の牝牛」か/信じがたいほどの危機感の欠如
Posted at 05/06/25 PermaLink» Tweet
昨日は午前中月報書き、思ったより早く仕上がったので昼食前に発送して、午後は少々休憩。3時からまた仕事、8時まで休みなし。最終の特急で帰京。
車中では主に『アール・デコの時代』を読む。エコミークラス症候群ではないが、午後の仕事がずっと座りっぱなしなので、特急でさらに2時間以上座っているせいか、どうもそのあと調子が悪くなる。休んだり読んだりしながら新宿まで。南砂町のセブンイレブンで立ち読みしていたら、SAPIOが出ているのに気づき、買う。シャワーを浴びたりネットしたり何したりで2時ころ就寝。
寝る前にネットを見ていたら、東京都美術館で『アール・デコ展』をやっているのに気がついた。鑑賞記を書いておられた方にメールを送ると日曜までとのこと、土曜日はいつも調子が悪いのだが、最終日よりは混雑状況はましだろうと思い午前中に出かけることにした。
朝はやはりどうも調子が悪い。調子が悪いときはここのところあまり無理して動かなかったのだが、地下鉄に乗っていてもあまり回復しないこの状態は、低血圧らしいことに気がついた。若いころはよく低血圧で悩まされたが、最近はあまりなかったので、この状態が自分でよくつかめていなかったのだが、血圧異常を解消する導引術をちょっと試してみて、何とか動けるように。
都美館の会場は大混雑。調子が悪いときは人のオーラに侵食されやすいものだが、ラ・トゥール展などと違い今回は観衆?がどうも美術系の?手にメモを持った学生風やどうにも俗物的なオーラが強く、ちょっと出かけてきたことを後悔する。やたらと暑くなったせいでみな薄着なのだが、薄着に慣れてないのでみな余計なオーラを放出しているのである。おそらくは私も相当顰め面のオーラを放出していただろうから人のことは言えないのだが。
キャプションを読んでいたらいきなりジェンダー調の記述で読む気がどすんと萎える。この時点でカタログを買わないことはもう決定である。調子の悪いときはこんな風に思考が短絡的になる。学芸員の質が最悪だなとぶつぶつ言いながら見て回るが、もちろんデコの時代、つまり20年代のキーワードのひとつは女性であることは分かっているのである。ただ、どこに焦点を当てるかが問題で、メッセージ色があまり強いのは受け付けない。
しかし最初の方はそういうものに限らず、自分が好きでないものばかり並んでいて全くいやになった。救われたのはフランク・ロイド・ライトのステンドグラスで、その前でしばし呆然としていた。異郷で古い友人にあったような心境とでも言うのだろうか。
そのあたりでだいぶ気を取り直し、カッサンドルのポスターを堪能。本の挿絵で出ていたのはみなモノクロだったので、ノルマンディー号もエトワール・デュ・ノールも現物を見られたのはよかった。思わぬ掘り出し物はカルティエのミステリー・クロックで、ギャラリーフェイクで読んだことはあったが実物を見ることができるとは思わなかったので感激だった。
黒人女性のほぼ裸体のダンサーが踊り続けるフィルムが流されていたが、あれは誰だったのだろう。『アール・デコの時代』にはジョセフィン・ベーカーというダンサーが出てくるが、彼女なのだろうか。今の目から見るとずいぶん素朴なダンスだが、当時としては十分刺激的だっただろうと思う。
マン・レイの写真はよかった。
カタログは買わないことにしたのでポストカードを何枚か買ったが、カッサンドルのものはカード化する許可が出なかったようで、あまり満足のいくものは買えなかった。マン・レイのアルファベットをモチーフにした版画が84,000円で売られていて、ちょっと欲しかったのだが諦めた。
トータルとしては、今日いけてよかった。今日行かなければ行かなかっただろうし、フランク・ロイド・ライトとも、マン・レイとも、カッサンドルともミステリークロックとも出会えなかっただろう。
どうも疲れが出てしまい、とにかく家に直行して帰る。湯島のホームの売店でビッグコミックの新号が出ているのに気づき、読みながら帰る。あるもので昼食を済ませ、午後は爆睡。
こういう日は、というか最近ずっとそうなのだが、ニュースは不愉快なものが多くてここでもあまり触れたくなく、書かないようにしていたのだが、中国が毒ガス処理に一兆円払えだの鯨バーガーを動物保護団体が批判だの、まさに不愉快極まりない。アメリカでは狂牛病2頭めが出てきても日本に無理やり売り込もうとしているし、ITERで日本が断念した見返りに与えられる優遇策に中国・韓国がクレームをつけたりと、いったい何事かと思う。
こういう事態になってしまったのは、個々の問題において日本が弱腰であったことが大きな問題ではあるのだが、限りない譲歩を続けてしまったためにいまさら強硬姿勢に転換しても流れを変えるのが難しくなっている気がする。
小泉首相もどうかと思うところはもちろん多いのだが、最近は首相の足を引っ張るために靖国神社参拝をはじめとして外国に阿(おもね)ることで首相の足を引っ張ろうという姑息な政治家が目に付き、まさに亡国の危機を感じる。
税制改正が問題になっているが、その前に中国の要求に答えて1兆円捻出するために全ての国民に1万円課税するか否かを問う国民投票でもやればどうか。中国様の気まぐれな免罪符を買うために、老人から新生児まで、IT長者からホームレスまでみなが1万円を出さなければならないということにして。
免罪符といえば、16世紀初頭ローマ教会は主にドイツで免罪符(贖宥状)を売っていた。莫大な金額がローマ教会に流れたといい、ドイツは『ローマの牝牛』と呼ばれたのだという。そのような現状に対する批判者として現れた一人が宗教改革者・ルターだったのである。ルター自身の思惑はともかく、宗教改革とドイツのナショナリズムとが重なり合うところがあるのは確かである。ルター訳の聖書は近世ドイツ語確立の一つのメルクマールでもある。
日本は『中国の牝牛』なのだろうか。ODAという金蔓を手放すことにしぶしぶ同意した中国は、ローマ教会の免罪符と同様、日本が一兆円払ったところでまた必要になったらまた難癖をつけて日本から金を搾り取ろうとすることは火を見るよりも明らかである。「免罪符の効力」は、一時的なものであるというより、幻想だというべきであろう。なんでも金で解決しようとしてきたその態度は、結局「和解の幻想」に金を払わされていたに過ぎないということにそろそろ気がつくべきである。
鯨バーガーに対する批判でも、日本人でも批判側に回る人がいて全く目を疑う。捕鯨禁止勢力の主張など全く感情的でナンセンスであるのに、冗談ではない。
ああもういったいどういう国になってしまったのだろう。20年後に日本は存在するのだろうか。それとも上海とハワイの中間線が米中国境になっているという中国高官の妄言が現実になっているのだろうか。
ちょっとあんまり後ろ向きになってきた。記述が後ろ向きのことが多くなってしまったことが、前の日記を閉じたひとつの原因でもあるので、何かどうにかしたいところはある。ただ、まともに社会のことを考えるととても憤激せずにはいられないことが多くて上っ面ばかりのことを書いていても意味がない気もする。
とにかく、今の日本の最大の問題点は、あきれるばかりの、信じがたいほどの、危機感の欠如にあると思う。はっきりした危機感を感じないままに滅びていった国、滅びていった民族がいったいいかに多かったことか。
旧約聖書の預言者ではあるまいし、そんなことを思わなければいけないのはとてもたまらないものがある。
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