ウェブ活動再開－Feel in my bones

　ウェブ活動を再開することにした。

　新しいものをどのように作っていくのかということについては、それこそまだ骨格しかできていないのだが、こつこつ見えないように作って一度にどーん、と全部まとめてやることを目指していてはなかなかいつまでたっても形にならない。常に人の目に晒されて共感や批判を受けながらではないとものが作りにくい、というふうになったなと思う。

　それはいいところも悪いところもあって、一番悪いところは自分の眼のチェックが行き届いていないことだろう。一度ウェブに乗せたものでも、また改めて見直すことをあまり眼中にいれていないために、あまりこなれていない表現を使ったり、洗練度の低い文章を載せることになってしまう。しかし文章というものはある意味生き物なので、その日のその感覚でしか書けないことの良さというのは捨てがたいところもある。しかし、いずれ後から読み直したりほかに転載したりする可能性を考えるとどこかで見直さなければいけないということも思う。

　とりあえずこれからはこうします、とここで宣言するということでもないので、続けていく間にだんだんこんな感じでやってますという全貌が明らかになっていくだろう。グループ作業ならば最初に原則を決めてそれに則ってやるのも有効な方法だけど、個人作業ならば最初にあまりきっちりした原則を立てすぎるとそれに縛られて思考が不自由になってしまう。私はそういう不自由さがとても嫌いなのだけど、それは逆に言えばそういうことに縛られてしまいやすい傾向があるということでもある。

　ただ、やはり大体こんなところでやる、というのは明文化はしないまでも自分で感覚的にでも了解していなければまずい。そうすると無原則になり、無原則になると結局は怠惰に流れて、楽な方へ楽な方へと流れていく。ウェブにものを書くというのは別に楽をするためにやっているのではないのだから、そこでもまた本末転倒がおこってしまう。

　私などは、ウェブ活動に限らないのだけど、物事をしているとすぐに、いや、こんな感じではない。これは違う、と思いつつもまだ軌道に乗らないだけかもしれない、あるいは続けることに意味があるんだ、などと考えたりしてなかなか納得のいくものが作れなかったりする。それは、本当は自分が何を求めているのか、ということを理解できていないときにそうなるのだが、何を求めているかなど必ずしも一言で言えるものでもないし、一言で言おうとして逆にそれに囚われたり縛られたりすることにもなるのである。

　ただ、自分の望むもの、自分が美しいと思うもの、自分がいいと思うもの、自分が本当だと思うことを書いていこうと思う。不完全な人間であるからそのときそのときで矛盾することもあると思うが、その矛盾の中からも何かを汲み取って行きたいと思う。それができないのは、人によって違うけれども、私の場合にはある種の勇気が足りないからだと思う。非難されること、批判されることを恐れたり、無視されたり誤解されることを恐れたりする部分は、以前に比べればだいぶなくなったと思うが、まだまだのところもある。それは、自分が直感的に正しいと思っても、それを説明する言葉がなくて、言葉がないと自分の直感の方を疑ってしまう、そういう悲しいところが自分にあったからだと思う。

　何かの感情や操作された情報にうっかり引っかかってしまった場合を除いて、自分がほんとうに信じられるものは自分の直感しかない、と自分のことに関しては思う。時間が経ったり、一歩引いて考えてみたりすれば、それを説明する言葉は見つかることが多いのだ。だからそこで自分を疑いたくなる弱さを封じて、勇気を持って言葉を捜さなければならないと思う。もちろん自分が感情に振り回されていないか、情報に操作はないかということは常に調べなおさなければならないが。

　王子さま、カスピアン王。たえず勇気いっぱいでおられなければいけません。ただちに、おひとりでいかなければなりませんから。－「カスピアン王子のつのぶえ」

　われらはひとたび、このような冒険に乗り出したからには、のぞみもおそれも全て捨てなければなりません。－「銀のいす」

　いずれもC.S.ルイス作・瀬田貞二訳の「ナルニア国物語」の一節であるが、いずれも当たり前のようなせりふでありながら私の心に深く残っているものである。特に後者は『神曲』の地獄門に書かれた「この門を過ぎしもの、一切の望みを捨てよ」ということばと、ヴェルギリウスの「ここでは一切の恐怖心を捨てなければならない」という言葉を思い出させる。ナルニアの中でも「銀のいす」は一種の地獄巡りだから、ルイスはおそらくダンテの作品から構想や霊感を受けているだろう。しかしおそらく、生きるということはいつでもある種の冒険であり、あるいは地獄めぐりであるわけだから、「のぞみも恐れも全て捨てなければならない」ことは常にありえることである。

　絶望と希望、ということになるとまた違うテーマとなっていくらでも書くことが出てくるが、しばらくはこの勇気という言葉を胸に秘めて、ものを書いていきたいと思う。