個人情報保護法施行から80日あまり
Posted at 05/06/23 PermaLink» Tweet
昨日は午前中アール・デコについて書いたり本を読みつづけたりしていた。信州にいるとできることが限られているのでかえって余計なことに気を取られず集中できる部分は確かにある。ゆっくりと時間が過ぎていくのも本当だ。東京では、できることがたくさんありすぎるので時間がいくらあっても足りない感じがする。しかし東京でできるたくさんのことができなくなったら、人生がかなりつまらなくなるだろうことも確かである。
午後はミーティング、3時過ぎから仕事。同業者の募集戦略を聞いているといろいろ参考になる。個人情報保護法施行以来、新規に顧客を広げていかなければならない業種の人たちはいろいろと苦労しているだろう。DMが送られる方も、溢れるほどポストに投げ込まれるのは辟易するが、送る側の立場にいるとそれを頼りに問い合わせてくる人たちはたくさんいるということもよくわかる。DMがなくなるともっと主体的に必要な情報を集めなければならなくなるわけで、ある意味情報格差が広がっていくということもあるのだろうと思う。
私個人としては個人情報保護法の施行されている現状のありかたはちょっと行き過ぎだと思う。世の中全体としてそちらには知っているのでそう簡単に揺り戻すとは思えないが、大学が学生の親に成績を送付することさえ学生本人の許可が必要だとか、配偶者に伝えるべき内容を聞く事ができないとかいう現状はどう考えても硬直しすぎている。確かに人間は法律的には独立した主体的な個人ではあるが、当然それなりに依存しあっている部分があるわけで、成績が親に伝えられなくて結果的に卒業できなかったり、けんかして飛び出した相手と連絡が取れなくなったりしても個人の責任だと言ってしまっては、社会があまりに冷たすぎる、というよりむしろ不合理な面が強いのではないかと思う。
ということは法律的にはともかく、本当に独立した主体的な個人というのは本当は存在するのかということになる。個人であらんとする人もいれば、そう意識はしないという人もいるというのが現実だろう。そして必ずしも個人であろうとしようとしない人たちが世の潮流のかなりの部分を決定しているというのも事実である。19世紀が『個人』を発見したとしたら20世紀は『大衆』を発見した、わけである。
メディア・リテラシーについて以前何度も書いたけれども、そういう立場から言うと私は基本的には個人主義者であることは間違いない。情報を鵜呑みにせず主体的に判断できるという意味での個人性がもっと社会の主潮になるべきだと思う。
しかしそれはどんなに徹底しようとしても、情報に流され、情報を頼りにしてしまう部分が人間から消えてしまうということではないと思う。それは、人間は100パーセント完全には主体的であることはありえないということだろう。ちょっと想像してみても、それはものすごくわがままで恣意的な人間であるような気がしてしまう。しかしわがままで恣意的な人間が本当に主体的であるかというと、自分の動物的な本能に突き動かされていたり、自分の先入観に目を曇らされていたりすることは容易に想像されるわけで、そんな人間を主体的というのはちょっと違うと思うだろう。
やはり目指されるべきはバランスの取れた個人であって、言うべきこと、やるべきことはきちんと主張し実行することは重要だが、まわりのさまざまな情報は施行錯誤によって取捨選択していくしかなく、その判断には絶対に誤りも含まれているわけである。
いろいろ考えてみると、個人情報保護法というのも、「個人」というのはどういう存在なのか、それを考えてみるきっかけとしてはよい問題かもしれない。欧米社会に比べて、日本ではそう言うことについて考えの深められ方が足りないのは事実だと思う。欧米的な超個人主義社会が日本に適合しているとは私には思えないが、考えておいても損はなかろう。そういう個人性(主体性)と社会への依存性のバランスというか、そう言うもののつりあいの取れるところは欧米とは違ったところで見つかるのではないかと思う。
***
追加だが、日本人がドライな個人主義者になれないことについて、『ギャラリーフェイク』で山水画について扱った回に、梅雨の気候を一面では愛する日本人のウェットな気質がケイタイの文化にも表れている、ということを言っていて、日本人が「主体性を持った個人」になりきれない部分がある、という問題と共通したテーマだな、と思ったことを書いておく。
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